よくある質問 【歯周病治療に関する質問】

Q:歯周病とはどんな病気ですか?

A:歯周病とは、お口の中に感染した細菌が歯ぐきに炎症を引き起こし、徐々に歯を支える歯ぐきや顎の骨(歯周組織:ししゅうそしき)を破壊して、最終的には歯が抜け落ちてしまう病気です。
日本人の30歳以上の3人に2人が歯周病に罹患しているとも言われ、その原因はプラーク(歯垢)中に存在する歯周病菌です。時々、虫歯と混同される患者さんがいらっしゃいますが、虫歯はプラーク中の虫歯菌が産生する酸が歯を溶かす病気です。それに対して、歯周病は歯を支える顎の骨を溶かす病気です。

Q:歯槽膿漏と歯周病は違うものですか?

A:同じものです。
かつては、歯の周辺の歯ぐきが腫れて膿が出るという症状から「歯槽膿漏(しそうのうろう)」と呼ばれていました。しかし、現在では、歯ぐきだけでなく、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)を始め、歯の周辺の広範囲に様々な症状が表れるため「歯周病」という名称が用いられています。

Q:歯肉炎と歯周炎は違うものですか?

A:どちらも歯周病の病態の1つですが、歯周病の進み具合によって歯肉炎と歯周炎に分けられます。
歯肉炎は炎症が歯ぐきにとどまっている状態で、歯を支える組織(歯周組織)が破壊されておらず、適切なブラッシングや歯科医院で歯石除去を行うことによって治すことができます。しかし、歯肉炎を放置すると炎症がより歯ぐきの奥深くに進行し、歯周炎になります。
歯周炎になると歯周組織が破壊され、歯ぐきは赤く腫れ上がり、歯を支える顎の骨がどんどん溶けていきます。すると次第に歯がグラグラ揺れるようになり、最終的には自然に抜け落ちてしまいます。
歯肉炎と違って、歯周炎によって破壊された歯周組織は元通りには治りません。

Q:歯周病は全身の病気に関係しているのですか?

A:その通りです。
歯周病は歯ぐきが腫れて出血したり、歯が抜けたり、口臭がするといったお口の中に問題を引き起こすだけでなく、歯周病菌や歯周病に罹患したことによって生じた炎症物質を唾液と一緒に飲み込むことによって、あるいは炎症を起こした歯ぐきの血管から血流に乗って、全身に広がり悪影響を及ぼします。以下に歯周病と関わりのある疾患を挙げます。

  1. 動脈硬化(心筋梗塞、脳梗塞)
  2. 感染性心内膜炎
  3. 糖尿病
  4. 早産・低出生体重児出産
  5. 肥満(メタボリックシンドローム)
  6. 誤嚥性肺炎
  7. 骨粗鬆症

特に糖尿病は歯周病と相互に影響し合っており、歯周病を治療すると糖尿病が改善し、糖尿病を治療すると歯周病が改善することが明らかになっています。

Q:歯周病は何歳くらいから起こるものですか?

A:歯周病は成人してから起こるものと思われていますが、実は歯周炎の前段階である歯肉炎は幼少期から起こります。
ですから、歯が生えた時から歯周病に罹患するリスクがあります。また、歯周炎は初期の段階では痛みなどの自覚症状がほとんど無いために、発見が手遅れになることもしばしばあります。
日本人では実に30歳以上の3人に2人が歯周病と言われています。歯周病を予防するために、毎日の歯みがきと歯科医院での定期検診とクリーニングが重要です。

Q:歯周病はどうやって治すのですか?

A:歯周病が進行し溶けてしまった骨は、一部の条件が整っている場合を除いて、基本的に元に戻すことができません。
とにかく症状を悪化させないようにすることが大事です。歯周病の原因はプラーク(歯垢)中の歯周病菌です。ですから、歯周病になってしまった際には、根源であるプラーク=細菌をいかに減らすかが重要なポイントです。細菌を減らすためには、まず毎日のブラッシングによって、細菌を増加させないことが大切です。当院では必要があれば何度でもブラッシング指導を行います。
その上で、歯石除去の治療を行っていきます。歯周病の症状が改善した後も、定期的なチェックを行い、再発に努めます。

Q:歯周病治療の流れを教えて下さい。

A:基本的に以下の流れで治療を行います。
はじめにレントゲン写真や歯周組織検査などの初期検査を行います。初期検査によって歯周病の進行度を診断した後に、ブラッシング指導&歯石除去を実施します。歯石除去は、歯ぐきの上の歯石と、歯ぐきの下の歯石に分けて行います。その都度、歯ぐきの治りを確認するための検査を実施します。それでも歯周病が改善しない場合は、歯ぐきの手術(歯周外科手術)を行って、歯ぐきの深い部分に付着した歯石を徹底的に取り除きます。これで歯ぐきの状態に改善がみられれば、定期的なメインテナンスに移行して、歯周病が再発したり再び進行するのを予防します。

この他にも、必要に応じて以下の治療を行います。

  • かみ合わせの調整
  • 残せない歯の抜歯
  • 不適切な詰め物、被せ物のやり直し
  • 歯ぎしり治療
  • 禁煙指導
  • 矯正治療

Q:歯周ポケットとは何ですか?

A:歯と歯ぐきの間には、健常な人でもわずかな隙間があり、この部分を歯肉溝(しにくこう)と言います。
おおよそ1~2mmの深さがあります。歯周ポケットとは、歯周病の炎症により、この歯肉溝が深くなった病的な状態を示します。歯周組織検査の際は、歯肉溝にプローブと呼ばれる先の細い器具を軽い力で挿入し、その深さと歯ぐきから出血があるかどうかを測定します。
4mm以上の深さがある、あるいは歯ぐきからの出血があれば、歯周病に罹患しています。3mmの深さの場合は境界値ですので注意が必要です。

Q:歯石を取ってもらったら歯がしみるようになりました。どうしてですか?

A:歯石は歯の表面、特に歯と歯ぐきの境目あたりに付着します。
歯石が多量に付着し、歯の表面を広く覆っている場合、歯石を除去すると本来の歯がお口の中に露出するようになります。これは本来は良いことなのですが、それまで歯石によって歯の表面への刺激が遮断されていたため、冷たいお水などに対する刺激に敏感になってしまいます。
さらに、歯石除去後は歯ぐきの炎症が消退し、それまで腫れた歯ぐきに覆われていた歯の根がお口の中に露出するようになり、刺激を受けやすくなります。これらが歯石除去後に歯がしみる原因で、知覚過敏と呼ばれる症状です。基本的には一時的な症状ですが、人によっては治りにくい場合もあります。
この場合は、知覚過敏に効くお薬を塗ったり、知覚過敏に効果のある歯磨き粉を使用してもらうことで対処します。

Q:早く治療を進めてほしいのですが、何回も歯磨き指導を受けています。どうしてですか?

A:歯周病の原因であるプラークは、どんなに歯科医院で除去しても、時間が経てばまた歯の表面に付着してきます。
台所の水回りやお風呂の水垢と一緒です。歯科医院で毎日丁寧に専門的なクリーニングをしてもらえれば清潔な状態を保てるでしょうが、それをする人はいないでしょう。しかし、ほとんどの人は毎日歯磨きをすると思います。ですから、その1回1回の歯磨きを正しく行うことができれば、お口の中のプラークを効果的に減らすことができますし、歯周病治療の効果を高めることができます。
歯周病治療は、歯医者での治療(プロフェッショナルケア)と患者さん自身の取り組み(セルフケア)の両方が成立することで、初めて効果を発揮します。
つまり、患者さん自身の歯磨きのスキルが治療の成否を大きく左右します。これが、歯医者で何度も歯磨き指導を行う理由です。

Q:重度の歯周病で歯を抜く必要があると言われました。なんとか残せないのですか?

A:歯周病は進行するにしたがって、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が吸収していきます。
歯周病の治療を行うと、それ以上顎の骨が吸収するのを防ぐことはできますが、限られた条件以外では、失われた骨を元通りに再生することはできません。したがって、歯科医院を受診した時点で歯を支えることができないくらい顎の骨が吸収している場合は、治療を行っても歯のぐらつきを改善することはできません。
また、そのような歯の場合、残したとしても歯が自然に抜け落ちてしまい、食事と一緒に飲み込んだり、最悪の場合、気管に誤嚥したりして大変危険です。
それだけでなく、重度の歯周病の歯が残っていると、その歯から歯周病菌が他の歯に感染して歯周病を悪化させる要因にもなります。糖尿病などの全身への影響も無視できません。
それゆえに、非常に残念ではありますが、見た目は虫歯のない健康そうな歯であっても、重度の歯周病の場合は抜歯が適応になるのです。

Q:歯周病はどのように予防するのですか?

A:歯周病を予防するためには、何よりもまずプラークコントロールが不可欠です。
歯の周りに付着したプラーク(歯垢)を除去し、細菌を減らすことで歯周病の進行を食い止めることができます。歯の表面や浅い歯周ポケット内のプラークは、ご自身の毎日のブラッシングによって大体は取り除くことができますが、残念ながら完璧に取り除くことは困難です。
また、歯周ポケットの奥深くに入り込んだプラークは、ご自身で除去できないため、そういったプラークが蓄積すると歯石化し、ますますブラッシングだけで除去することは難しくなります。したがって、歯科医院で定期的に専門的なクリーニングを行う必要があります。
ご自身と歯科医院の相互の取り組みによって、歯周病を予防していきます。

Q:歯周病のチェックはどのくらいの間隔で受けたほうが良いのでしょうか?

A:一般的には3~4ヶ月に1回は歯科医院で診てもらい、口腔衛生指導や歯石除去を受けるのが良いでしょう。しかし、ブラッシングの技量や歯石の付きやすさには個人差があるため、それよりも短い場合や長い場合もあります。
実際の治療を通じて受診間隔の目安を決めていきます。

Q:お口が臭うのですが歯周病ですか?

A:歯周病の症状の1つに口臭があります。
しかし、口臭の原因は様々で、歯周病のようにお口の清掃不良が原因の場合もあれば、鼻や消化器などの内臓疾患が原因の場合もあります。また、実際には症状がないのに、口臭があると感じてしまう心理的な要素が原因の場合もあります。
気になる場合は歯周病との鑑別も必要ですので、一度、歯科医院を受診して診察を受けることが望ましいです。

Q:歯磨きの時によく出血します。歯周病ですか?

A:歯周病で歯ぐきに炎症があると、歯ぐきが赤く腫れて、歯磨きなどの物理的な刺激で出血しやすくなります。
特に歯周病がひどい場合は、食べ物などが歯ぐきに当たる刺激でも出血することがあります。しかし、白血病などの全身的な疾患によっても、歯ぐきからの出血が起こりやすくなることもありますし、歯ぐきにできる癌(歯肉癌)でも出血しやすくなることがあります。
また、喫煙している場合は、ニコチンなどの作用で歯ぐきの毛細血管が収縮し、歯周病であっても出血しにくくなっている場合があります。
歯磨きの際に歯ぐきからの出血が頻繁にみられる場合は、早期の歯科受診をお勧めします。

Q:歯磨き粉は何を使ったら良いですか?

A:歯周病はプラーク(歯垢)の中の細菌によって引き起こされる感染症ですので、薬効成分が含まれた医薬部外品を使用することをお勧めいたします。
具体的には、塩化セチルピリジニウム(CPC)、グリチルリチン酸ジカリウムといった成分を含む歯磨き粉が、代表的な歯周病予防に効果があるものになります。また、高濃度プロポリス配合により歯周病だけでなく口内炎にも効果があるものもあります。
しかし、いずれにせよ正しいブラッシングができて初めて効果を発揮しますので、不安な方は歯磨き粉の選び方とブラッシング方法について歯科医院で確認してもらうのが良いでしょう。

Q:洗口液は使ったほうが良いですか?

A:使った方が良いです。
歯周病の治療や予防に効果があります。ただし、洗口液だけでは歯周病の原因であるプラークを完全に除去するのは困難ですので、ブラッシングによってプラークを除去したうえで併用するのが望ましいです。また、化粧品としての洗口液ではなく、きちんとした薬効成分が配合されている医薬部外品を使用するようにしましょう。
当院では歯科医院専売品の洗口液を取り扱っていますので、お気軽にご相談ください。

Q:タバコは歯周病に悪いと聞きました。本当ですか?

A:本当です。
タバコに含まれるニコチンなどの化学物質が歯ぐきの血の巡りを悪くし、歯ぐきの免疫力を低下させ、歯周病にかかりやすくなってしまいます。また、歯周病に気づくきっかけである歯ぐきからの出血を抑制するため、歯周病にかかっていることに気づきにくくなってしまいます。
それだけでなく、歯周病治療に対する感受性(治療の効果)が低下することが明らかになっています。
健康への様々な害が指摘される喫煙ですが、歯周病にとっても重大なリスク因子ですので、禁煙が最も望ましいでしょう。

Q:よく歯ぎしりしていると言われます。歯周病に影響しますか?

A:健康な人であれば、歯ぎしり自体が歯周病に影響することはありません。
しかし、重度の歯周病に罹患している場合、歯を支える顎の骨が減少しているので、歯を支える働きが弱くなっています。すると、通常であれば問題ないかみ合わせの力でも、相対的に過大な力として作用してしまい、歯周病を悪化させてしまうことがあります。
また、特定の歯に力が強く加わる場合、その場所の骨が吸収することがあります。歯ぎしりでお悩みの際は、歯科医院に相談に行くと良いでしょう。

Q:歯並びが悪いのですが、歯周病と関係ありますか?

A:歯並びが悪いとプラークコントロールが不十分になりやすく、歯周病にかかりやすいとされています。
また、特定の歯に強い力が加わることがあり、その場所の骨が吸収するなどのリスクがあります。まずは歯並びに合った適切なブラッシングができているか、歯科医院で診てもらうと良いでしょう。