小児の歯科矯正

当院では、永久歯が生え始めた頃に歯並びに問題があり、それが上顎の骨の発育不足が原因と考えられる場合に、小学校入学後から矯正治療を行っております。
不正咬合についての考え方と当院での治療についてご紹介いたします。

不正咬合と歯並び

不正咬合には様々なケースがあります。叢生(そうせい:歯の重なり)、上顎前突(じょうがくぜんとつ:出っ歯)、下顎前突(かがくぜんとつ:受け口)、開咬(かいこう:前歯が咬み合わない)などが主な不正咬合です。その年齢までの成長過程と遺伝的な要因のほか、生まれてからの環境、生活習慣が大きく関わってくるようです。例えば、哺乳の仕方、食事の仕方、姿勢、口に関する悪習癖(あくしゅうへき)、呼吸の仕方などによる影響です。悪習癖の一部は、ある程度の年齢になりそれをやめることができれば、歯並びも自然に改善することもありますが、永久歯が生え始める時期以降も継続していると、不正咬合につながる可能性があります。
 そもそも、歯並びは歯の周りの色々なバランスが釣り合うことできれいに並びます。まず顎の骨です。歯は顎の骨に存在します。歯が並ぶための十分な顎の大きさがあると、歯は並びやすいです。しかしながら顎が十分に発育せず狭い場合は、歯が生えるスペースが不足し歯が重なったりして、歯がきれいに並びません。さらに、歯には外側からの力と内側からの力の双方の力がかかってきます。外側の力は、頬、唇などの口の周りの筋肉などの力です。内側からの力は舌による力です。どちらかの力が強いとその影響を受けた歯並びになります。外側の力が強いと歯が重なったり、出っ歯になりやすいです。内側の力が強いとすきっ歯になりやすいです。このように歯は顎の骨の上に並び、外側から頬や唇で、内側から舌で挟まれています。この3つのバランスが適正であれば歯は自然ときれいに並びます。

歯並びを決める要因

顎の骨は上顎の骨と下顎の骨があります。上顎と下顎の骨は顔の中でも非常に大きな部分を占めています。そして、この上顎と下顎がしっかり発育し、唇がきちんと閉じ、舌が上顎に付いていて、鼻呼吸している状態が良い歯並びの条件となります。こういう状況であれば、頬や唇と舌の調和のもとに適切な嚥下(飲み込み)ができることになります。
 しかしながら、上顎が正常に発育していない場合、舌が上顎についていないことが多いです。逆に舌が上顎にくっついていないので、上顎が適切に発育しない理由にもなります。舌が上顎についてないと、舌は喉の方に下がり気道を塞ぐので、呼吸しづらくなります。そのため、頭を前方に傾けて、さらに口を開けて口から呼吸しようとします。また、舌が下がると食事の時も舌を使ってうまく飲み込めないため、頬や唇の筋肉を使って飲み込むようになります。その結果、頬や唇の圧力が勝り、歯が外側から押されて歯並びが乱れてきます。また、口呼吸は全身に様々な影響を及ぼすと言われています。
 上顎の発育が不足すれば、咬み合う下顎の発育も悪くなります。上顎の骨の発育が、理想的な歯並びになる一番の要因となります。

上顎の骨の発育が大事

それでは、上顎の骨が発育するとはどういうことでしょうか?

顎の発育は、まず上顎の発育が先行し、それに呼応して下顎が発育します。上顎の発育は、6歳頃までに大人の80~90%くらいまで順調に成長し、10歳頃まで成長が続き、12歳頃にはほぼ成長が終了します。一方下顎の発育は上顎の発育に呼応しつつゆるやかに成長し、12歳以降身長の伸びと共に成長が大きくなります。そのため、適正な年齢まで上顎の骨が十分発育しないと、下顎の骨の成長にも影響が出て、最終的には歯並びにも影響が出ることになります。
 この上顎の骨の発育は、乳児期の哺乳に始まり、離乳食を経て普通食に到達する過程で、適切に舌、唇、頬を使うことによって成長します。
 一方、上顎の骨は頭蓋骨とくっついています。そのため、上顎の骨が発育することは、それとくっついている頭の部分の発育も関係してきます。さらに上顎の上に頭がありますので、頭の姿勢も歯並びにとって大事な要素になります。頭の姿勢とは、重力方向と一致した体幹の軸に対して、その体幹軸の真上に頭が位置することが理想的な頭の姿勢となります。

上顎の骨の発育不足に隠された問題

上顎骨の発育不足は歯並び以外にも大きな影響を及ぼします。まずは呼吸です。上顎骨の発育不足により、後方の咽頭(いんとう)と呼ばれる空気の通り道が狭くなります。空気の通り道が狭いと慢性鼻炎、喘息、アレルギー疾患、口呼吸、いびき、睡眠時無呼吸症などの症状が現れることがあります。また、姿勢の問題もあります。前かがみや猫背といった姿勢をとるようになります。

当院で行う矯正治療

当院では、こうした上顎の骨の発育不足による歯並びの問題には、小学校入学後から3年生くらいまでのお子さんを対象として、矯正治療を行うことが適正かどうか検討いたします。問題が生じている早い時期に取り組むことで、この時期の成長に合わせながら、起きている問題の弊害を取り除き、正しい方向に成長を促すようにします。年齢的には6~8歳頃から治療を始め、3年くらいの治療期間を要します。その後経過を観察し、最終的には永久歯が全て萌出し咬み合う時まで見ていくこととなります。
 全てのケースで治療ができるわけではありません。また、本人だけの問題ではなく、ご家族のご協力が必要となります。指導した通りに行っていただけなければ、うまくいかないこともあります。従いまして、治療に際しては十分検討していただいた上で行うようになります。

詳しくお話を聞きたい方は一度当院にご相談ください。