睡眠時無呼吸症候群

明石台 歯医者 睡眠時無呼吸症候群

夜間の睡眠の質が低下するために、日中の生活や業務に支障をきたしている健康被害が報告されています。
平成15年2月に、JR西日本・山陽新幹線の運転士が運転中に居眠り状態となり、停車駅に到着した際にブレーキ操作が適切に行われず、所定の停車位置よりも手前で自動停止するという事案が発生しました。この運転士が睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndorome:SAS)の患者であったことから、この疾患が世間一般に広く知られることになりました。

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸障害を起こす病気です。
睡眠中に何らかの原因で気道が閉じたり狭くなることで、一時的に呼吸が止まる(無呼吸)、あるいは弱くなる(低呼吸)といった症状が発現します。無呼吸や低呼吸になると、息が苦しくなり目が覚めてしまうので、良質な睡眠の妨げとなり、日中の強い眠気を引き起こします。

睡眠時無呼吸症候群による日中の強い眠気は、判断力や集中力の低下に繋がり、居眠り運転などの重大事故や労働災害の原因になります。また、いびき、夜間の頻尿、起床時の頭痛なども典型的な症状です。日本呼吸器学会によると、睡眠時無呼吸症候群は成人男性の約3~7%、成人女性の約2~5%にみられ、男性では40~50歳代が半数を占める一方で、女性では閉経後に増加するとされています。

睡眠中に無呼吸や低呼吸が起こると、低酸素血症や高炭酸ガス血症となり、心臓、肺、循環器系などに負担がかかります。その結果、成人の睡眠時無呼吸症候群では、高血圧、脳血管障害、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、突然死の原因になるとも言われています。

睡眠時無呼吸症候群の診断

睡眠検査

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、耳鼻咽喉科や呼吸器内科を受診してください。
問診などで睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、携帯型装置による簡易型睡眠検査や終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行い、睡眠中の呼吸状態を評価します。

PSGで1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上あり、かついびき、夜間の頻尿、日中の眠気、起床時の頭痛などの症状を伴う際に、睡眠時無呼吸症候群と診断します。AHIが5〜15を軽症、15〜30を中等症、30以上を重症としています。

無呼吸が起きる原因によって、睡眠時無呼吸症候群は大きく2つに分類されます。
①閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS):空気の通り道である上気道が物理的に狭くなり、呼吸が止まってしまう。
②中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS):脳にある呼吸中枢の異常によって呼吸が止まってしまう。
歯科治療で改善が期待できるのは前者の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合です。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

SASの患者さんの約9割がOSASに該当すると言われています。
上気道が狭くなる要因としては、首・喉まわりの脂肪沈着や扁桃肥大のほか、舌根(舌の付け根)、口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋(口腔上壁後方の軟らかい部分)などが睡眠時に重力により沈下することによる喉・上気道の狭窄が挙げられます。

したがって、OSASが疑われる場合は、上顎と下顎の位置関係、歯列弓の幅や大きさ、舌の大きさや軟口蓋や口蓋弓との位置関係、扁桃の大きさ、舌根から、咽頭の後ろまでの距離などを評価し確認します。

一般的にOSASの患者さんは、下顎が後退している、歯列弓が狭窄している、舌が大きい、軟口蓋が低位にある、お口を大きく開けた時に口蓋垂や扁桃が見えない、扁桃が肥大しているといった特徴がみられます。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

減量療法

肥満者では減量することでAHIが改善することが多く、食事療法や運動療法を実施します。また、アルコールの摂取は睡眠の質を低下させるので、晩酌は控えましょう。

経時的持続陽圧呼吸療法

明石台 歯医者 睡眠時無呼吸症候群

経時的持続陽圧呼吸療法(Continuous posi-tive airway pressure:CPAP)とは、マスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている上気道を広げる治療法です。AHIが20以上の場合における標準的な治療法とされています。

口腔内装置

明石台 歯医者 口腔内装置

口腔内装置(Oral Appliance:OA)は、上下顎の歯列に一体型のマウスピースを装着し、下顎を前方に誘導することで、狭くなっている上気道を広げる治療法です。基本的には軽症のOSASの患者さんが適応ですが、中等症以上の患者さんでもCPAPと併用する場合があります。
ただし、残っている歯が少なく、マウスピースの固定が困難な場合は適応外です。また、耳鼻科的な疾患があり、鼻呼吸ができない患者さんも適応外です。

OAは歯科医院で治療が可能な唯一のOSAS治療ですが、OAの作製には医科の医療機関からの紹介状が必要です。睡眠時無呼吸症候群を疑う場合は、まずは耳鼻咽喉科や呼吸器内科などの専門の医科医療機関を受診しましょう。

アデノイド・口蓋扁桃摘出術

小児のOSASは、アデノイドや口蓋扁桃の肥大が原因であることがよくあります。この場合は、肥大したアデノイドや口蓋扁桃の摘出術が適応になります。耳鼻咽喉科での治療が必要です。

当院におけるOA治療の流れ

  1. 医科医療機関からの紹介状を持参して、当院を受診します。
  2. OA治療の妨げとなるような虫歯、歯周病、顎関節症などの疾患がないか検査を行います。
  3. OA治療に先立って虫歯、歯周病、顎関節症などの治療が必要な場合は、そちらを優先して治療します。
  4. OA治療が可能と判断された場合、上下顎の歯型およびかみ合わせの記録を採得します。かみ合わせの記録をとる際は、ジョージゲージと呼ばれる特殊な装置を使用します。
  5. OA用のマウスピースを製作します。
  6. マウスピース(OA)を上下顎に装着して、上下顎の位置を仮固定します。
  7. 実際に夜間の就寝時に使用してもらい、違和感や痛みなどの問題が生じないか経過観察を行います。必要に応じて上下顎の位置関係(下顎の前方移動量)を微調整します。
  8. 上下顎の固定位置が決定したら、医科医療機関でOAを装着した状態で睡眠検査を実施してもらい、治療効果の判定を行います。
  9. OA装着によってOSASの症状に改善がみられれば、OAの上下顎の位置の本固定を行います。改善がみられない場合は、OAの調整を行って再度睡眠検査を実施し、適切な下顎の前方移動量を決定します。
  10. OAの本固定が終了した後も、顎関節や筋肉に過剰な負担がないか、あるいはかみ合わせが変化していないか定期的な検診を行います。

OA治療における注意点

医科医療機関からの紹介状がないとOAの製作は行えません

保険診療において、OAの製作は医科医療機関からの依頼があり、紹介状を持参した場合に限り可能です。医科医療機関を受診せずに、睡眠時無呼吸症候群の治療を希望して歯科医院を受診してもOAを製作することはできません。万が一、そのような患者さんが来院された場合は、当院より医科医療機関をご紹介させていただきます。

OAは基本的に軽度のOSASの患者さんに適応です

OAは、狭窄した上気道を物理的に広げる対症療法で、治療の効果には限界があります。そのため、中等症以上のOSASの場合は適応外となる場合があります。CPAPにどうしても慣れることができずOAのを希望される患者さんも中にはいらっしゃいますが、ご自身がOA治療の適応になるかどうかは、医科主治医にご相談ください

OAを長期的に使用するとかみ合わせが変化することがあります

OAを長期的に使用すると上下顎の骨や筋肉、位置関係が変化し、かみ合わせが変化する場合があります。多くの場合、このかみ合わせの変化は不可逆的で、治療をしても完全には元通りにならない場合があります。特に元々のかみ合わせに不正があった場合や、顎関節症を有している場合にその可能性が高まります。そのため、OA治療が終了した後も、定期的な検診を受ける必要があります。