歯科と耳鼻咽喉科の連携

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歯科と耳鼻咽喉科(以下、耳鼻科)は、専門科の名称は別れていますが、相互に関連する病気が多くあります。これは歯科が対象としているお口と、耳鼻科が対象としている鼻・耳・咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)が隣り合わせに位置するからです。そのため歯科と耳鼻科に関連した病気では、耳鼻科と連携して治療を行うことになります。

今回のコラムでは、歯科のどのような病気が耳鼻科と関連があるのかご紹介すると共に、歯科と耳鼻科の連携についてお話してみます。

それでは、以下のような病気が耳鼻科と関連があります。

歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)

鼻は空気の通り道である鼻腔と、鼻腔の周りにある4つの空洞からなる副鼻腔から成り立っています。4つの副鼻腔とは、上顎洞(じょうがくどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)です。これら鼻腔と副鼻腔は壁で分けられていますが、それぞれつながっています。このうち上顎洞は、頬の内側で、鼻のわきにあり、上の歯の真上にある、副鼻腔の中で最大の空洞のことを言います。

上の奥歯の根の先端は、上顎洞の底に非常に近接していて、人によっては上顎洞の中に突き抜けている場合もあります。そのため、上の奥歯の根に生じた炎症が、上顎洞にも及ぶことがあり、これを歯が原因で生じた上顎洞の炎症という意味で”歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)”と呼びます。多くの場合、虫歯が重症で歯の神経まで細菌感染が進み、根の先端周囲の骨を溶かし、その炎症が上顎洞まで達した場合に生じます。こうなってしまうと、歯そのものの痛みに加えて、頬の痛みや腫れ、鼻づまり、鼻水、嗅覚異常などが生じ、さらに上顎洞から他の副鼻腔まで炎症が及ぶと、目の周りの腫れ、流涙、頭痛が生じると言われています。

歯性上顎洞炎が疑われる場合には、口の中の診査と共に、レントゲン検査、場合によりCT検査を行い、歯が原因かどうかを診査します。歯が原因と考えられる場合には、原因となる歯の治療を行うと共に、抗生物質などを処方して炎症を抑えます。腫れて膿などがたまっている場合には、膿を出すための処置を行うこともあります。症状が和らぎ炎症が落ち着いてから、歯を残すことができるのか、もしくは抜歯になるのか、判断することになります。

逆に鼻の炎症(副鼻腔炎)が原因で歯の痛みを感じる場合もあります。この場合には、耳鼻科受診を促します。特に以前副鼻腔炎の手術を受けたことがある場合には、何年か経ってから副鼻腔炎が再び起こることがあるので注意が必要です。

抜歯やインプラント手術に伴う偶発症:上顎洞穿孔、上顎洞への歯根・インプラント迷入

上顎洞について上記でご説明したとおり、上の奥歯の根の先端は上顎洞と接するか、場合により突き抜けています。そのため、上の奥歯の抜歯の際にまれに上顎洞に穴が空くこと(穿孔:せんこう)があります。穴が小さい場合には、自然に治りますが、穴が大きい場合には、飲んだ水が鼻から漏れたり、一時的に副鼻腔炎になることがあります。副鼻腔炎の症状が強い場合には、口腔外科や耳鼻科を紹介をして診てもらうことになります。

さらに、上の奥歯の抜歯の際に、根が上顎洞の中に入り込んでしまうこと(迷入:めいにゅう)があります。その場合には、入り込んでしまった根を口腔外科や耳鼻科で取ってもらう必要があります。同じ理由で、インプラントの手術の際に、誤ってインプラントが上顎洞の中に入り込んでしまった場合にも同様な処置を行う必要があります。

もちろん、こうした偶発症を起こさないよう慎重かつ十分注意をして処置に臨みますが、起こらないとは限らないのです。

鼻詰まり、口呼吸

風邪を引いて鼻詰まりになり、口呼吸になってしまうことは誰しもあると思います。また、慢性副鼻腔炎があり、いつも口呼吸にならざるを得ない方もいます。以前のコラム「お口ポカンは歯並びが悪くなる!「大人の口呼吸の弊害①・②」でも書きましたが、口呼吸は、歯科では”万病の元”と言えます。口呼吸で口の中が乾燥していると自浄作用が働かず、虫歯や歯周病の原因になるだけでなくそれらの悪化につながり、また誤嚥性肺炎の原因にもなります。また、口呼吸は歯並びにも影響します。ですから、鼻詰まりや慢性副鼻腔炎、扁桃腺炎、アデノイド肥大などによって口呼吸になっている場合には、早めに耳鼻科で治療を受けましょう。

口臭

口臭には、いくつかの分類があります。

①真性口臭症

周囲の人が我慢できる限度を超える口臭が認められるもので、生理的口臭と病的
口臭の2種類があります。

②仮性口臭症

本人は口臭を訴えるが、実際には社会的限度を超える口臭は認められないものです。

③口臭恐怖症

真性口臭症、仮性口臭症に対する治療では改善が期待できないものです。
このうち、①真性口臭症の病的口臭には、お口の中が原因の口臭と、全身由来の口臭があります。全身由来の口臭は、耳鼻科疾患、呼吸器疾患、腎疾患、糖尿病、肝疾患に由来するものがあります。口臭があり、歯磨きや舌清掃、洗口をしても口臭が収まらず、さらに鼻からも臭いがする場合には耳鼻科疾患が原因であることが疑われるため、耳鼻科に原因疾患の治療を依頼することがあります。

口腔がん、上顎洞がん

お口の中にできるがんを、口腔(こうくう)がんといいます。発生率は全てのがんのなかで約4%です。唇やお口の中の粘膜、歯ぐき、舌、舌の下の粘膜、上あごに発生します。また、上顎洞に発生する上顎洞がんも歯科と近い領域に発生します。治療は、口腔外科が専門に行いますが、耳鼻科領域と重なる場合も多々あるので、耳鼻科と協力して治療にあたることも多いです。

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ) 

口唇口蓋裂とは、生まれつき、唇(口唇)や上あご(口蓋)がうまく形成されない病気です。治療にあたっては、小児科、形成外科(または口腔外科)、矯正歯科、小児歯科、一般歯科、耳鼻科、言語聴覚士など様々な専門分野がチームを作り治療にあたります。このうち歯科領域では、口腔外科は口唇や口蓋の形態を改善させるための手術を行い、矯正歯科は歯並びの治療、小児歯科や一般歯科は虫歯の予防管理・治療を行っています。

健常児に比べて、口蓋裂がある患児は、耳・鼻疾患に罹患する頻度が高いと言われています。特に耳疾患である滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)は、難聴の原因となり、正常に言葉を習得する上で大きな問題となります。口蓋裂児の80%以上で滲出性中耳炎がみられるといわれています。そのため、生後すぐから12歳頃まで、耳鼻科で定期管理を受けることになります。

まとめ

今回のコラムでは、歯科と耳鼻科の病気がいかに関連するかについてお話ししてきました。さらに、歯科と耳鼻科が連携して治療を行うことが多いこともご理解いただけたでしょうか。
歯科の病気は生活習慣病とも深く関係しており、近年、耳鼻科に限らず医科との連携も活発に行われてきています。当院では、今後も医科歯科連携を密にして、皆様のお口の健康管理を行って参ります。

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