小児の虫歯治療 Part1

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 小児の虫歯

 今回は、小児の虫歯治療についてのお話しです。

 「乳歯はいずれ永久歯に生え変わるので、治療はしなくてもよい」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、実際はどうなのでしょうか?乳歯は特に大切にしなくてもよいのでしょうか?

 また、生えたばかりの永久歯は、大人の永久歯とは異なる特徴があります。今回、小児の虫歯治療につきまして、2回に分けてお話ししてみたいと思います。、Part1では乳歯や生えたばかりの永久歯の特徴について、Part2では具体的な小児歯科の虫歯の治療方法についてご説明いたします。

乳歯の特徴

 生後半年を過ぎた頃から下の前歯から生え始め、2歳6か月~3歳頃に全ての乳歯が生え揃います。色は、永久歯に比べて白い色をしています。乳歯は上下にそれぞれ10本ずつあり、合計20本です。

 歯の構造は、永久歯と乳歯どちらも、表面からエナメル質、象牙質という層状になっています。エナメル質と象牙質ともに、乳歯は永久歯の1/2の厚さしかありません。つまり、歯自体が永久歯よりも薄いのです。また、歯の内部には、神経や血液が通っている歯髄(しずい)がありますが、この歯髄の歯に占める大きさが永久歯よりも大きいです。そして、永久歯に比べて乳歯の歯髄は鋭く尖った形をしています。

 歯の質としては、永久歯よりも水分や有機質を多く含むため、軟らかいという特徴があり、酸に対して溶けやすいとされています。

 乳歯が抜けた後に同じ場所から生えてくる永久歯(後継永久歯)が生えてくる時期の2~3年前から少しずつ、乳歯の根(歯根)は溶けていきます。

 また、乳歯の歯並びに注目してみると、歯と歯の間に隙間があります。この隙間について、保護者の方から質問を受けることも多いですが、これは正常なので心配はいりません。むしろ、この隙間があったほうが唾液による自浄作用も働きやすいので虫歯のリスクは低く、永久歯に生え変わってからの歯並びもきれいに並ぶといわれています。

幼若永久歯の特徴

 幼若(ようじゃく)永久歯という名前は、あまり馴染みがないと思います。生えたばかりで、歯根(しこん:歯の根っこ)がまだ完成していない永久歯のことを指します。個人差もありますが、永久歯が生え始めてから、2~3年の期間までの永久歯のことを指しています。成熟した永久歯と比べて、多くの異なる特徴があります。

 まず、歯根がまだ完成しておらずレントゲン写真でみると根の先端が開いている形態をしています。そのため、歯髄に及ぶような深い虫歯の治療時には歯根の成長を疎外しないように考慮する必要があります。

 生えたばかりの幼若永久歯は、生えている途中のため、長さが短く反対側の歯と噛み合いません。そのため、咀嚼による自浄作用が働かず歯表面の食べかすやプラークが残りやすいので、歯磨きをより注意して行う必要があります。そして、反対側の歯と噛み合わないので歯がすり減っている(咬耗)部分もないため、歯本来の隆起や突起や溝の形態がはっきりしています。例えば、前歯の先端がボコボコ隆起していたり、奥歯の溝が深く複雑な形になっています。

 また、歯自体もエナメル質が未成熟で脱灰しやすく、その内側の象牙質の厚さも薄く、成熟した永久歯に比べて虫歯の進行も早いとされています。

乳歯と幼若永久歯は虫歯になりやすい

 以上で書いた通り、乳歯や幼若永久歯は、成熟した永久歯よりも虫歯になりやすく、できてしまった虫歯が早く進行してしまいます。

そのため、大人と同じようなおやつや甘い飲み物を、大人と同じように食べたり飲んだりしていると、大人は虫歯になっていないのに、子どもだけ虫歯だらけに・・・ということもあり得るのです。子どもは、大人よりも虫歯になりやすいと覚えておいて、普段の食生活や歯磨きについて考えていく必要があります。

乳歯の虫歯を放置することのリスク

 乳歯は、いずれ永久歯へ生え変わります(図)。一番最初に、下の前歯が5~6歳頃、奥の乳歯は10~11歳頃に生え変わります。乳歯の虫歯を放置すると、以下のリスクがあります。

①乳歯の虫歯は進行が早い
乳歯は、上でも書いたとおり、歯自体の構造が薄く、質も虫歯になりやすい質をしています。また、歯内部の歯髄が大きく、尖っているので虫歯が歯髄にまで達しやすくなっています。大人の虫歯で歯髄まで達する虫歯というと、かなり長い年月がかからないとなりませんが、乳歯の虫歯ではより短い期間で歯髄まで達してしまうのです。

②永久歯の生える方向が変わる→歯並びが悪くなる
歯髄まで達した虫歯をそのまま放置していると、歯の根から虫歯菌が出てきて、周囲の骨まで溶かしていきます。乳歯の歯根の近くには、乳歯が抜けた後に生えてくる永久歯があります。そのため、虫歯菌が永久歯にも悪影響を与えます。永久歯が、虫歯の炎症がある部分を避けて逃げようと動き始め、本来生えてくるべき場所よりも斜めや前後方向にズレて生えてきてしまうのです。

③永久歯の質が悪くなる(Turner歯)
乳歯の歯根の周囲まで虫歯が広がってしまうと、その虫歯菌が、永久歯にも悪影響をあたえます。②のように生える方向が変わるのに加え、永久歯のエナメル質の質が悪くなり、黄色や白濁色になり、はじめから虫歯になりやすい弱い歯になってしまうのです。

④永久歯が先天欠如の場合のリスク
歯の本数が生まれつき足りないことを先天欠如(せんてんけつじょ)といいます。永久歯では、前から2番目の歯、5番目の歯が足りないことがよくあります。最近では、昔よりも増えてきていると言われています。これは、生えてくる前ではレントゲン写真を撮って診査しないと分からないことです。たまたま、乳歯が虫歯で抜けてしまったり抜歯が必要なほどの虫歯になった場合に、万が一その後から生えてくるべき永久歯が先天欠如が判明すると、乳歯の抜歯後、そのスペースをどうするか考えなくてはなりません。大人になってから、ブリッジやインプラントで治すためのスペースを空けておくのか、そのスペースは矯正治療で閉じてしまうのか、何もしないのか相談しながら治療方針を決めていくことになります。

 乳歯を虫歯にせず健康であったり、小さな虫歯でもしっかり治療されていれば、治療方針を決めるまでの間、その乳歯はしばらく使うことができます。

まとめ

 今回は、乳歯と幼若永久歯の特徴についてご説明しました。乳歯と幼若永久歯の虫歯予防、虫歯治療がとても大切であることがお分かり頂けたかと思います。次回のPart2も楽しみにしていただければ幸いです。

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