咀嚼機能の検査とは

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 咀嚼機能の検査とは

 先月7月に当院の非常勤歯科医師の佐藤智哉先生が所属する「日本補綴歯科学会」の第131回学術大会が大阪で開催されました。本学術大会は3年ぶりの現地開催ということもあり、活発な議論が交わされ、大いに盛り上がりました。

 さて、その学会のなかで、お口の機能検査に関するお話がありました。この先日本はますます高齢化が進んできます。加齢と共にさまざまな要因がからみ、お口の機能が徐々に低下してきます。健康長寿でいるためには、お口の健康を維持し、いつまでも自分のお口(歯)で食事ができるか、が重要になってきます。そのためには食べる、話すなどのお口の機能が低下していないかを検査で調べる必要があるというお話でした。

 ではみなさんは、自分のお口でどれだけちゃんと噛めているか、ご存知ですか?

 実はそれを知るための咀嚼機能検査というものがあります「咀嚼機能の検査って何?」という人がほとんどではないでしょうか。今回は、お口の機能を調べるさまざまな検査のうち、平成28年4月から保険導入された「有床義歯咀嚼機能検査」に関連して、これからの歯科治療では当たり前になってくるであろう、咀嚼機能の検査についてお伝えしてみたいと思います。

咀嚼機能検査って何?

 「咀嚼(咀嚼)」とは、食べ物を噛み砕いて唾液と混ぜ合わせ、やわらかく飲み込みやすい食塊(しょっかい)にすることです。引き続きこの食塊を飲み込む動作である「嚥下(えんげ)」を行い、食道を通して胃に落とし込みます。

 咀嚼機能検査とは、その名前の通り咀嚼機能の状態がどうなっているかを調べる検査です。歯科治療の主な目的は、虫歯や歯周病で失われたお口の機能を回復し、再び美味しく食事を取れるようにすることにあります。これまでの歯科治療では、虫歯を削って詰め物や被せ物を装着し、歯がない部分には入れ歯やブリッジ、インプラントで補ってあげるという治療が長く行われてきました。しかし、その治療がどれだけ患者さんにとって満足のいくものであったか、あるいはどれだけ失われた(咀嚼)機能を回復したのかを測る尺度は、主に患者さんの主観的な感想によるものでした。例えば、「治療によってまた噛めるようになり、おいしく食事ができるようになった。」とか「入れ歯だけど何でも噛める。素晴らしい。」とか、反対に「高いお金を払って保険外の入れ歯を作ったけど、いまいち保険の入れ歯と変わらないような気がする」など、同じような治療を受けてもその感じ方は患者さんによって様々です。

 しかし、咀嚼機能検査は客観的な検査であり、結果は数値として出てきます。したがって、これまでは曖昧にされてきた「どれだけ食べ物を効率的に切断・粉砕して飲み込みやすい形にしているか」について、客観的に確認することができます。

 ちなみに、これまでも実際に患者さんの主観に依存しない、客観的な指標はなかったのかというと実はそうではありません。大学病院の歯科のような大きな施設では、咀嚼機能を図る検査法がこれまでにもありましたが、機器が高額だったり、手順が煩雑だったり、何よりも保険診療で認められていなかったため、一般的な町の歯医者さんでは広く普及はしていませんでした。

検査で何がわかるの?

 保険導入された咀嚼機能検査では、以下の3点について調べることができます。

① 咀嚼の際に顎がリズミカルに円滑に動くかどうか。
② どれだけ効率的に食物を切断・粉砕できるか。
③ 食物を噛み潰す力がどれだけあるか。

これらを治療の開始前と治療の終了後に測定することで、歯科治療によってどれだけ咀嚼機能が改善したのかを客観的な数値で知ることができます。もちろん数値が改善していれば、治療は効果があったものと言えますし、自分の実感として治療前とあまり変わらないような気がしても、実際の数値が改善していれば治療の効果があったことを示しています。

 今までは治療の効果があるかないかについて、術者(歯科医師)と患者さんの間で意見が食い違うことも時々ありましたが、この検査の結果を見れば一目瞭然です。

どんな検査をするの? 

①下顎運動検査(かがくうんどうけんさ)
お顔に計測機器を装着して、特定の顎の動きを三次元的に測定します。健常者は規則正しいリズミカルな運動を繰り返しますが、顎の動きに問題がある場合は、異常な運動が検出されます。

② 咀嚼能力検査
特定の成分を含むグミゼリーを一定時間咀嚼してもらい、どれくらい成分が抽出されるかを測定します。細かく粉砕されるほど抽出される成分量が多くなるので、咀嚼能力が高いということになります。

③ 咬合圧検査
ある特殊なフィルムを力いっぱい噛みしめることで、お口の噛む力とどれだけバランス良く上下の歯が接触しているかを測定します。噛む力が強いほど、歯の接触するバランスが良いほど、咀嚼機能は高いということになります。

一般的には、これら①~③の検査を一度に全て行うのではなく、状況に応じて組み合わせて行います。また、治療の効果を判定するために、治療の前後で行うことが必要です。

検査の適応症

基本的には歯科治療、特に差し歯、被せ物、入れ歯、インプラントなど、かみ合わせに関わる治療を行った患者さんは全てが対象ですが、残念ながら令和4年の時点で保険適応として認められているのは、以下の4つです。

  1. 「総入れ歯の場合」または「上下どちらかの顎だけで失った歯が9本以上あり、入れ歯を装着している場合」
  2. 入れ歯を装着していて、左右の一番奥の歯を含む4本以上の歯を失っている場合
  3. 特殊な入れ歯を使用している場合(顎義歯や舌接触補助床)
  4. 保険のインプラント治療を受けている場合

したがって、これらの条件を満たさない場合は、自費診療で行うことになります。

まとめ

 咀嚼機能の検査に関する今回のお話はいかがだったでしょうか。

 まだまだ一般の歯科医院に広く普及しているわけではありませんので、初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。当院は、今は咀嚼機能検査を実施していませんが、今後機器を導入し、積極的に治療に取り入れていく予定です。今後は導入する歯科医院も増え、歯科治療の前後に咀嚼機能検査を行うのが当たり前になっていくことと思います。

 日々、日進月歩する歯科医療ですが、当院も新しい治療法を積極的に取り入れ、知識・技術の向上に努めてまいりたいと思います。

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