反対咬合とは
かみ合わせが上下で逆、すなわち下の歯が上の歯より前にあるかみ合わせのことを反対咬合といいます。しっかりかみ合わせると上の歯が下の歯に隠れて見えないこともあり、下顎が前に出て、しゃくれているような顔貌になります。家族にどなたか反対咬合の方がいれば、遺伝的に反対咬合になる確率は高いと思います。反対咬合の場合、正常咬合者と比べると様々なデメリットがあります。
そこで今回は、反対咬合のデメリットについてお話しし、反対咬合の治療には早期治療をお勧めしておりますので、その理由についてお話ししたいと思います。
反対咬合のデメリット
反対咬合のデメリットは以下の通りです。
- 審美的に懸念される
- 食事の時、奥歯で噛むことが多くなる
- 上顎の発育が弱いため、鼻などに影響が及ぶ
- 発音の問題や、顎関節症になるリスクが高い
- 将来、前歯や奥歯を失う確率が高い
顎がしゃくれているため、心理的に負い目やコンプレックスを感じやすい
奥歯での噛み合わせが中心となり、奥歯に負担がかかり、咀嚼不良になりやすい
耳鼻科的な疾患が関係することがある
舌をうまく使えない、顎の関節に負担がかかる
反対咬合は前歯が萌出してすぐにわかります。しかし、そのまま放置すると悪化して、最終的には外科的に顎を手術して矯正せざるを得ない場合があります。日本人は欧米人と比べて反対咬合の割合が多いようです。
反対咬合の治療
反対咬合の治療は、早期に治療する場合と、すぐに治療せず、成長が止まってから治療する場合と2通りあります。
1・早期治療の場合
「幼少期から治療する場合」と「小学校入学後から治療する場合」があります。
幼少期、すなわち乳歯の歯並びが反対咬合の場合です。お口の中に入れる簡易な装置を使用したり、習癖を改善するためのトレーニングなどを行い、改善を試みます。軽度な場合はこのようなことで改善することがあります。また、遺伝的な問題がない場合には、永久歯の萌出と共に自然に改善される場合もあります。
小学校入学後から治療する場合は、前歯の永久歯が上下各2~4本くらい萌出して、反対咬合である場合に、いろいろな検査をして治療を進めてまいります。
当院では、この小学校入学後からの治療を行います。と言いますのは、やはり早期治療が大切だからです。どのような病気でも、治療は早期発見・早期治療が基本です。矯正治療も同じです。ただ、矯正治療はどうしても数年の治療期間が必要となります。その際小学校入学前の児童では、治療への本人の理解が難しいこと、また永久歯がまだ未萌出なので、永久歯がある程度萌出するまで、その分治療期間がかさむことです。小学2年生くらいになると、ある程度治療への理解が進み、ちょうどよい時期になります。なぜなら、上顎の発育が関連するからです。上顎の発育は10歳までに行われるため、10歳までに数年かけて反対咬合の改善を進めたいからです。10歳までに反対咬合の改善が行われれば、その後全ての永久歯が生え揃うまで、そのまま経過を見ていきます。
2・成長期が過ぎてから治療する場合
早期治療をしない場合は、思春期の成長がすむまで経過を観察し、成長期が過ぎてから抜歯や外科的な手術をして改善する場合です。結局顎の大きさや位置を改善できないので、永久歯を4本くらい抜歯をして、歯を動かすスペースを作って矯正治療を行います。また、顎の手術の場合は保険適用も可能で、経済的な負担は軽くなります。また、治期期間も短縮できるようです。
ただ、これらは永久歯の抜歯をするというデメリットや顎の手術をするという負担がかかります。
当院の反対咬合の治療
当院では上記1の「早期治療」を行います。
上顎の位置や大きさはとても大切で、上顎が正しく発育することで様々なメリットがあるからです。
上顎が正しく発育するメリット
- 正しい舌のポジションを得ることができる
- 気道が確保されることにより、正しい呼吸ができる
- 正しい舌の位置や気道が通ることで、姿勢が良くなる
- 正しく舌を動かすことができるようになるため、正しい咀嚼と嚥下ができる
- 副鼻腔内の詰まりが解消し、耳鼻科的な問題が改善される場合がある
- 正しく咀嚼できることにより、脳の発達にも良い影響があると考えられる
早期治療の内容
- 口の中に上顎、下顎ともに固定式の装置を入れます。
- 頭には装置をつけて外側からも上顎の発育を進めます。
- 決められた時間装置をつけます。
- 週に何回か装置を拡大していきます(この時は親御さんの協力が必須になります)。
- 治療期間は3年くらい要します。
- 積極的な治療後にも、永久歯が全て生え揃う中学生まで経過を追っていく必要があります。
- 反対咬合の場合は、成長期が過ぎても持続的に下顎の成長が続くと言われているため、できる限り長期に渡って経過を観察していくことが理想です。
- 治療には、本人の頑張りだけでなく、ご家族の治療へのご理解とご協力が必要となります。
この治療法ですと、歯も抜かず、外科的な手術も回避できるため、治療後の後戻りがほとんどなく、一般的な矯正治療後のような保定の必要もありません。
以上の理由から、当院では早期治療を勧めております。
まとめ
今回のコラムは反対咬合についてお話ししてきました。お子さんの歯並びが気になる方は一度お声がけください。ただし、当院は矯正専門医ではありませんので、ケースにより近隣の矯正専門医の先生をご紹介し、そこで診ていただくこともあります。
どうぞご遠慮なくご相談ください。お待ちしております。