歯周病とは②~歯周病の病態と検査~

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは?

 歯周病ってどんな病気でしょうか。前回のコラムでは、歯周病になると歯が抜けてしまうこと、歯周病が全身に影響すること、細菌の塊である歯垢が歯周病の原因であることについてお話してきました。今回のコラムでは、歯周病の進行度や、歯周病を悪化させる因子、歯周病の検査についてお伝えします。

歯肉炎と歯周炎の違い

 歯周病は進行状況によって大きく2つに分けられます。歯ぐきが炎症によって腫れた「歯肉炎(しにくえん)」と、炎症が進行して歯を支える組織(歯周組織)が破壊された「歯周炎(ししゅうえん)」です。健康な歯と歯ぐきのイラスト(図1)を参考にしながら、それぞれの違いを確認していきましょう。

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは? 歯肉炎と歯周炎の違い
図1

歯肉炎(しにくえん)

 歯垢や歯石が歯と歯ぐきの間の溝の部分(歯肉溝:しにくこう)に溜まってくると、歯ぐきに炎症が起こります。最初のうちは特に痛みがありませんが、よく見ると歯と歯ぐき境目付近の歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨きの際に出血したりします(図2)。

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは? 歯肉炎(しにくえん)
図2

後述する「歯周炎」とは異なり、歯周組織の破壊が生じていないため、適切なブラッシングや歯科医院で歯石除去を行うことによって比較的容易に治ります。

 その他、以下のような全身的な要因によって起こる歯肉炎もあります。

・妊娠(妊娠性歯肉炎)

・血液疾患(白血病、壊血病)

・薬物性(降圧薬、免疫抑制剤、抗てんかん薬など)

歯周炎(ししゅうえん)

 歯肉炎の状態を放置すると進行して歯周炎になります。歯肉炎のときは歯ぐきにとどまっていた炎症が、歯周炎の場合は歯周組織まで及ぶようになります(図3)。

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは? 歯周炎(ししゅうえん)
図3

歯周組織とは歯を支える組織の総称で、歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質の4つの組織から成ります。

 歯周病菌は嫌気性菌といって酸素のある環境を嫌うため、歯肉溝のより奥深くに増殖していきます。そこで増えた歯周病菌は毒素を出して炎症反応を起こします。それに対して、体の方も免疫反応によって歯周病菌を退治しようとしますが、この反応が長く続くと、毒素だけでなく産生された免疫物質によっても歯周組織は破壊されていきます。すなわち、歯ぐきは赤く腫れ上がり、歯を支える顎の骨がどんどん溶かされていきます(図4)。

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは? 歯周炎(ししゅうえん)
図4

すると次第に歯がグラグラ揺れるようになり、最終的には自然に抜け落ちてしまいます(図5)。

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは? 歯周炎(ししゅうえん)
図5

歯肉炎とは違って、歯周炎によって破壊された歯周組織は元通りに治りません。

歯周病を悪化させる因子

 歯周病を引き起こす一番の原因は歯垢でした。ですが、歯垢や歯石以外に、次に示すことも歯周病を悪化させる因子となります。

  • 喫煙

 ニコチンなどの有害物質が免疫力を低下させ、歯肉の血液循環を滞らせ、歯周病を悪化させます。ある統計データによると、歯周病にかかる危険は1日10本以上喫煙すると5.4倍に、10年以上吸っていると4.3倍に増加することが分かっています。また、歯ぐきの腫れや出血が見かけ上抑えられるので、歯周病にかかっていることに気づきにくくなり、気づいたときには重症化していることもあります。治療を開始しても非喫煙者よりも治りも悪く、禁煙することが最も効果的です。

  • 糖尿病

 免疫力低下により歯周病が悪化します。糖尿病と歯周病は相互作用し合うことが分かっており、糖尿病が悪化すると歯周病も悪化します。

  • 歯ぎしり、食いしばり、噛みしめ

 過剰な力が加わることで歯周組織の破壊が促進し、歯周病を悪化させます。

  • 適合の悪い被せものや入れ歯

 かみ合わせが悪いと特定の歯に力がかかります。ブラッシングしにくい不適切な形態だと、磨き残しが増えて、歯垢・歯石が溜まりやすくなります。

  • 不規則な食習慣

 ブラッシングが不十分になりがちで、歯垢や歯石の沈着が増加します。また、肥満の場合も脂肪細胞が分泌する物質が原因で、歯周病が悪化することがあります。

  • ストレス

 歯ぎしりや免疫力低下により、歯周病が悪化することがあります。

  • 全身疾患

 糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常は注意が必要です。

  • 薬の長期服用

 唾液分泌を低下させる、あるいは歯ぐきの増殖を促す副作用のある薬があります。また、免疫抑制剤などを服用しているときは歯周病にかかりやすくなります。

  • 部分的に歯がない

 特定の歯に力がかかりやすくなり、部分的に歯周病が進行することがあります。

  • 両親が若い頃から歯周病だった

 遺伝的に歯周病にかかりやすい体質があります。また、乳幼児期に食事の口移しを行うと、親から子へ歯周病菌が感染することがあります。

  • 口呼吸

 お口が乾燥し、お口の免疫力が低下します。

  • 女性の思春期・妊娠中・更年期

 ホルモンバランスの変化により歯周病を発症しやすくなります。

歯周病の検査

 歯周病になっているかどうかは、主に歯周組織検査とレントゲン検査によって確認します。

歯周組織検査

①歯周ポケット検査

 歯と歯ぐきの間の溝(歯肉溝)は、健常な人でもわずかな隙間があり、おおよそ1~2mmの深さがあります。ここにプローブと呼ばれる先の細い器具を軽い力で挿入し、その深さと歯ぐきから出血があるかどうかを測定します(図6)。4mm以上の深さがある、あるいは歯ぐきからの出血があれば、歯周病に罹患しています(図7)。3mmの深さの場合は境界値ですので注意が必要です。また、歯ぐきの深い部分の歯石の沈着状況も診査します。ちなみに歯周ポケットとは、歯肉溝が深くなった病的な状態をいいます。

②動揺度

 歯周炎によって歯周組織(特に歯槽骨)が破壊されると、歯がグラグラ揺れるようになります。この揺れ具合を歯科用ピンセットで触れて検査します。前後だけでなく左右に揺れるようであれば歯周炎が進行しています。押し込むと縦方向に沈み込む場合は、重度歯周炎であり、抜歯が適応になることがあります。

③歯垢の付着状態の評価(PCR:Plaque Control Record)

 歯の表面に付着した歯垢を赤く染め出して、お口に残っている歯全体の何%に歯垢が付着しているかを確認します。いわゆる赤染め検査です(図8)。

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは? 歯周病の検査
図8

目標値は20%未満とされています。

 この検査で大事なのは、歯周病に関わる歯の根元付近の歯垢の付着状況を確認しているということです。ですから、歯の上の方がどんなに磨けていても、根元の部分に歯垢がついていたらアウトです。よく磨いているつもりなのに、この値がいつも高い方は、歯の根元の部分に磨き残しがないかチェックしてみてください。

レントゲン検査

 歯周組織の中でも、特に歯根膜と歯槽骨の状態を詳しく確認します。歯槽骨の破壊(吸収)が歯根の1/3~1/2だと中等度歯周炎、1/2以上に及ぶと重度歯周炎と診断されます。定期的に撮影することで、経時的な変化を確認できるだけでなく、歯周病以外の疾患(虫歯、詰め物や被せ物の不適合、腫瘍など)が見つかることもあります。

その他の検査

  • 唾液検査

 唾液を採取し、専用の試験紙に添加して、歯や歯ぐきの健康度、口の清潔度などを検査します。簡単に検査でき、結果もその場でわかるため、その後のセルフケアに生かすことができます。

  • 顕微鏡検査

 唾液中の細菌を顕微鏡を使って観察し、歯周病に関連する細菌がどういう状態か確認します。

  • お口の写真検査

 カメラでお口の写真を撮って、歯ぐきの腫れなどの炎症状態を確認します。

  • かみ合わせの検査

 特定の歯に力がかかっていないかなどを検査します。

 今回のコラムは以上になります。歯周病を悪化させないためには、普段から定期検診を受けることと、歯肉炎の時点で適切な治療を行うことが重要です。ご自身の歯周病の状態が気になる方は、お気軽に当院までご連絡ください。

(参考文献)

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯周病とは?
最新情報をチェックしよう!