学術学会大会とは〜第53回日本口腔インプラント学会学術大会に参加して〜

Speaker giving a talk on scientific conference. Audience at the conference hall. Business and Entrepreneurship concept.

みなさまこんにちは。

明石台歯科医院副院長の佐藤智哉です。

先日、診療のお休みをいただき、令和5年9月15日〜9月17日に北海道札幌市の札幌コンベンションセンターで開催された第53回日本口腔インプラント学会学術大会に参加してまいりました。この度は、学会参加のため、当院での診療をお待ちの患者さんの貴重なお時間を頂戴いたしまして誠に申し訳ございませんでした。

歯科ではまだ少ないですが、医科では自分の専門分野の学会に参加することはごく一般的です。しかし、学会とはそもそもどういう団体なのでしょうか。そして医師や歯科医師は学会に参加して何をしているのでしょうか。

今回のコラムは、第53回日本口腔インプラント学会学術大会の参加報告を兼ねて、そうした学会に所属することの意義や役割について簡単に解説していきたいと思います。

学会とは?

学会(がっかい)とは、特定の学術分野や専門分野における研究者や専門家が集まり、情報交換や研究成果の発表、議論、共同研究などを行う非営利組織または団体です。学会は、その分野の最新の研究成果や知識を共有し、専門家同士が連携して研究を進めたり、専門知識を深めたりするための重要な交流の場となっています。

学会は通常、定期的に学術大会やシンポジウム、セミナーを開催し、研究発表や論文発表の場を提供します。また、会員に対して一定の頻度で学術誌を発行し、そこに研究論文や専門的な記事が掲載されます。学会は研究者や専門家の繋がりや知識の交流を促進し、その分野の進歩と発展に大きく貢献します。また、社会に対しての情報発信の役割も担っており、例えば、新型コロナウイルス感染症への対応について、日本感染症学会をはじめとした様々な学会から提言がなされていたことをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

歯科は医療の専門分野の一つですが、その中でも異なる診療内容ごとに細分化されており、それぞれの専門性に特化した学会が存在します。学会員となることで、研究者は自身の研究力を向上させ、診療に従事する先生は自身の医療技術と知識を向上させ、同じ分野の仲間と協力して歯科医療を発展させる機会を得ることができます。

学術大会とは?

学会に所属する会員が一同に会して、最新の知見や研究内容、あるいは症例等について発表し、自由に意見を交わすのが学術大会です。全国の会員が1カ所に集まる総会(全国会)と、地方都市ごとに集まる支部会(地方会)があり、それぞれ年1回開催される場合が多いです。今回の札幌での日本口腔インプラント学会は総会(第53回)と東北・北海道支部会(第43回)の同時開催でした。また、医療系の学術大会には、専門の医療機器メーカーや企業も参加しており、最新の医療機器や材料を実際に見て触れることができる「企業展示」というブースもあります。

医療の分野に限らず知識・技術は日進月歩ですが、その一方で、世の中にはまだ明らかになっていないことも沢山あります。我々歯科医療従事者にとって、最新の知見に触れることはとても大切で、そういった時間をまとまって取れる学術大会への参加は必要なことだと当院では考えております。

また、学術大会において、同じ医局や医院で過ごした同門の医療従事者と会って近況を報告し合うのも、我々にとっては非常に有意義な時間です。歯科医師は小規模な開業医が多く、医師のような大きな病院の勤務医が少ないので、どうしても普段の診療において他の歯科医師に接する機会は少なくなりがちです。また、たとえ勤務医であっても、全国に散らばった先生方と一同に会して語り合う機会はそう多くありません。「井の中の蛙、大海を知らず」という言葉があるように、学会大会での交流を通して、自分たちの行っている医療行為が独善的にならず、時代にあった正しい方向を向いているか確認し、今後のあるべき姿を再認識します。

ちなみに、似たような集まりにセミナーというものがありますが、これは勉強会のことであり、既に確立したある特定の知識や技術を習得するための集まりです。セミナーもスキルアップのためには必要ですが、学会とは異なり、自由な意見交換の場ではありません。

当院の歯科医師の所属学会

当院には常勤歯科医師が2名、非常勤歯科医師が1名おります。

うち、副院長の私は以下の3つの学会に所属しております。

・公益社団法人 日本補綴歯科学会:補綴(ほてつ)歯科(クラウン、ブリッジ、入れ歯、インプラントなど)に関する専門の学会です。https://www.hotetsu.com

・公益社団法人 日本口腔インプラント学会:歯科インプラントに関する専門の学会です。日本の歯科の学会において、最大の会員数を誇る学会です。https://www.shika-implant.org

・一般社団法人 日本口腔顔面痛学会:口腔顔面痛に関する専門の学会です。非歯原性歯痛(歯には痛みがないのに生じる歯の痛み)などを専門に扱います。https://jorofacialpain.sakura.ne.jp

また、非常勤歯科医師の佐藤優理亜先生は

・公益社団法人 日本小児歯科学会:小児歯科に関する専門の学会です。https://www.jspd.or.jp

に所属しています。

本学会で得たこと

今回の学会では、急速に発展が進むデジタル技術を応用したインプラント治療を中心に講演や発表を聴講してまいりました。当院でもセレックと呼ばれる、光学カメラ式の型取りシステム(口腔内スキャナー)がありますが、その最新モデルを用いた治療法に関する知識を深めることができました。いずれは当院にも最新型の口腔内スキャナーを導入したいと考えております。

また、企業展示ブースにおいて、最新のインプラント治療におけるシミュレーションシステムなどを見学して参りました。現在当院では医療機器の刷新工事を進めており、シミュレーションシステムも導入予定ですが、そうしたシステムを活用することで、より安全かつ円滑にインプラント治療を進めることが可能になります。

さらに、最新のインプラント治療を行う上での医療安全と感染対策、およびインプラント治療を行う際に必要な全身的知識についても聴講してまいりました。いずれも患者さんに安心してインプラント治療を受けていただくためには必要不可欠な知識です。知識を得て終わりにするのではなく、得られた最新の知見を少しずつ当院の治療の中に取り入れていきたいと思いました。

まとめ

今回のコラムでは、学会に所属することの意義や役割について解説してきました。

学会参加のために診療所を休診にした先生が、学会で何をしているのか。本コラムを通して少しでも伝われば幸いです。

当院では今後も学会参加のために、歯科医師が医院を不在にしたり、休診にすることがあります。患者さんにはご不便をおかけいたしますが、その趣旨についてご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

Speaker giving a talk on scientific conference. Audience at the conference hall. Business and Entrepreneurship concept.
最新情報をチェックしよう!