妊娠中・授乳中の歯科治療について

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 妊娠すると、女性の体は大きく変化しますし、日常生活にも制限が多くなります。妊娠中は、歯科治療は通常通り受けられるのでしょうか?また、出産後には授乳することになりますが、歯科治療を受けることで授乳に影響はあるのでしょうか?

 今回のコラムでは、妊娠中・授乳中の歯科治療についてご説明致します。

妊娠

 妊娠は、病気ではなく、生理的な過程の一つです。胎児は母親の体内で、妊娠週齢とともに成長発育し、母体も大きく変化していきます。そのため、歯科治療を行う場合には母体と胎児ともに配慮して行っていく必要があります。

 妊娠16週未満を妊娠初期、妊娠16週目(妊娠5か月)から妊娠27週目(妊娠7か月)を妊娠中期、妊娠28週目以降を妊娠後期といいます。安定期とは医学用語ではないのですが、一般的には妊娠5~7か月の妊娠中期のことを指し、胎盤がほぼ完成し早期流産のリスクが減り母子ともに安定した状態になります。つわりも治まり始め、体調が安定する人も多いといわれています。この期間に歯科治療が可能となります。

妊産婦と虫歯

 妊娠中は、つわりによって偏食になったり、逆につわりがなくなる安定期からは食欲が出てしまうことがあり、妊娠前とは食生活が大きく変化します。”食べつわり”の場合だと、空腹時にムカムカして吐き気が出てしまうため、常に何かを食べ続けてしまうこともあると思います。

 また、つわりがあるときは、歯ブラシを口の中に入れるのも気分が悪くなったりなど、口腔清掃が不十分になりやすくなります。また、妊娠中は唾液のpHが低下しやすいため、虫歯になる危険性が増します。

 出産後も、育児による生活の変化や不規則な生活、そしてストレスなどによって食生活に影響が出たり、自分の歯磨きも不十分になりやすいため、虫歯のリスクは高くなるとされています。

妊娠性歯肉炎

 妊娠によるホルモンバランスの変化によって、歯肉炎になりやすくなるといわれています。これを妊娠性歯肉炎といいます。妊娠性歯肉炎は、妊娠前期から起きることがあり、上の前歯がなりやすいとされています。歯肉が腫れて赤くなり、出血しやすい状態になります。しっかり口腔清掃を行うことで、症状は改善し、出産後には消失あるいは改善するとされています。

妊娠性エプーリス

 歯と歯の間の歯肉が増殖してくる歯肉腫で、上の前歯部に発症しやすいものです。大きさは2mm~数cmで、妊娠3ヶ月後頃より発症し、出血しやすくなります。特に生活に影響がなければ経過観察します。出産後に自然に小さくなったり消失することがあります。

歯周病と早産・低体重児出産との関係

 歯周病がある妊婦には、低出生体重出産や早産のリスクがあることがいくつかの研究で明らかにされています。口の中の歯周病の病原細菌が原因と考えられています。

妊娠中・授乳中の薬剤の使用

 妊娠中には、不必要な服薬は避けるべきですが、必要な場合には慎重に使用する必要があります。妊娠初期の薬剤の使用は、胎児に影響が出やすいと言われているため服薬は避けるべきでしょう。妊娠中期以降は比較的影響は少ないと言われていますが、それでも注意した方が良いでしょう。

 授乳中は薬剤が母乳から赤ちゃんに影響しますので、抗菌薬などのお薬は、なるべく使用しない方が望ましいです。どうしても服薬する際には、授乳間隔を空けたり、一時的に粉ミルクなどで代用すると良いでしょう。

 歯科で使用する薬剤は、主に歯科治療時に使用する局所麻酔薬、解熱鎮痛薬、抗菌薬です。

解熱鎮痛薬については、アセトアミノフェンは副作用が報告されておらず第一選択となっています。またNSAIDsの短期の頓用投与は危険性が低いとされています。抗菌薬については、様々な種類の抗生物質があります。ペニシリン系・セフェム系・マクロライド系の抗菌薬は安全とされています。授乳中の薬剤使用については、解熱鎮痛薬はアセトアミノフェン以外を使用した場合は授乳を避けるように添付文書に記載されています。抗菌薬は、ペニシリン系・セフェム系抗菌薬は比較的安全とされています。

 局所麻酔薬は、少量のアドレナリン添加局所麻酔薬が安全であると考えられています。

 いずれにしても、必ず妊娠中・授乳中に薬剤を使用する場合には独断で判断せず、医師・歯科医師・薬剤師の指示を受けてから薬剤を使用するようにしましょう。

妊産婦歯科検診

 妊娠すると自治体から交付される母子健康手帳には、”妊娠中と産後の歯の状態”を記録するページがあります。各自治体や歯科医院によっては無料で受けられるケースもあります。まずは、お住まいの地域の市役所や保健所で確認してみましょう。

 歯科検診では、虫歯、歯肉炎の有無、歯石の有無をチェックします。当院でも妊産婦歯科検診を行っております。

妊娠中の歯磨き

 つわりなどで体調が悪いために、普段どおりに歯磨きできない場合もあると思います。必ずしも食後の歯磨きにこだわらずに、一日の中で体調が落ち着いている時に歯磨きをしてみましょう。また、歯ブラシを口の中に入れるだけでも気持ち悪くなる場合には、子供用のブラシ部分が小さいものを使用すると抵抗が少ないので試してみましょう。歯磨き粉は、泡立ちの少ないジェルタイプのものがおすすめです。どうしても、歯磨き自体ができない場合には、洗口液(マウスウォッシュ)を使用してみましょう。洗口液にはアルコール含有の製品もありますので、心配な方はノンアルコールタイプの製品を選ぶとよいでしょう。また、キシリトールやリカルデント入りのシュガーレス・ガムを毎食後に噛むことで、歯の表面がサラサラになり、唾液が出て、虫歯予防に効果があります。

 当院でも、妊娠中の適切な口腔ケアについて歯科医師と歯科衛生士がご指導致します。

妊娠中・授乳中の歯科治療

 歯科治療を受ける場合は、念のため事前に産科の主治医に歯科治療を受けていい状態か確認するようにして下さい。妊娠中、出産後ともに歯科治療がしにくい時期が続きます。歯科治療は体調が落ち着いている妊娠安定期(妊娠5~7ヶ月)に受けるのがよいといわれていますが、急性の症状がある場合は安定期以外でも治療する場合があります。ただし安定期であっても、妊娠中の歯科治療は患者さん自身も精神的・身体的に負担があると思いますので、今後妊娠を希望される方は、妊娠前に歯科治療を済ませておく方がよいでしょう。

 授乳中に問題となるのは、歯科治療というよりは薬剤の使用です(妊娠中・授乳中の薬剤の使用の部分参照)。

まとめ

 今回は、妊娠中・授乳中の歯科治療についてのお話でした。当院では、自治体の妊産婦歯科検診を受け付けております。また、妊娠中・授乳中の歯科治療につきましても対応致しておりますので、お気軽にご相談ください。

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