歯科金属アレルギーの治療(後編)

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 歯 金属アレルギー

今回のコラムも歯科金属アレルギーの治療についてお話していきます。前編に当たる前回のコラムでは、歯科金属アレルギーの症状や診断について解説いたしました。後編の今回は、その治療法や治療時の注意点について解説していきます。

歯科金属アレルギーの治療法

歯科金属をお口の中から除去したことによって、歯科金属アレルギーが改善すれば、最終的な治療を開始します。仮の詰め物や被せ物で様子を見ていた歯を、アレルギーの原因となっている金属を用いない材料で治療していきます。

A. 詰め物(インレー)や被せ物(クラウン・ブリッジ)の場合

ここでひとつ知っておいたほうが良いことは、歯科金属アレルギーの治療では、必ずしも自費のセラミック治療を行う必要はないということです。原因金属を治療の材料として用いなければ良いので、保険診療で行えるコンポジットレジン充填やCAD/CAMインレー、CAD/CAM冠、硬質レジンジャケット冠などでも良いわけです。また、チタンはアレルギーの原因となることが少ないので、チタンアレルギーがなければ、最近保険導入されたチタンを使用したクラウン「チタン冠」を使用しても良いわけです。しかし、多くの歯医者では自費のセラミック治療を勧めてくることが多いと思います。それはなぜでしょうか?

答えは単純で、セラミックのほうが先に挙げた保険の材料よりも材質的に優れているからです。つまり、より綺麗で、より長持ちするからです。当院のコラム「保険の白い歯と自費の白い歯で何が違うのか?(前編・後編)」でも説明しましたが、保険治療であっても歯科治療はお金がかかりますし、時間もかかります。それだけのお金と通院する労力をかけて治療するのであれば、やはり良い治療を受けて、長持ちする材料で、おいしい食事をいつまでも楽しんでいただきたいと思うのが歯科医師としての正直な気持ちです。ですから、治療費に余裕があるのであれば、自信を持ってセラミック治療を受けることをおすすめします。

B. 入れ歯の場合

入れ歯の場合は、インレーやクラウン・ブリッジの場合と少し事情が異なります。というのも、「ノンメタルクラスプデンチャー」を除いて、大概の自費の入れ歯は金属床義歯となっており、それ自体が金属アレルギーの原因となっている場合もあるからです。ですから、歯科金属アレルギーの治療としては、必ずしも自費の入れ歯のほうが優れているとも限りません。

むしろ保険のレジン床義歯の方が使用する金属が圧倒的に少ないので、そちらが推奨されます。しかし、金属床に比べてレジン床では材料の厚みが出てしまうため、異物感なども強くなります。また、バネに使う金属にアレルギーがある場合は、それすら使用できませんので、消去法的に、すべて樹脂でできた自費の「ノンメタルクラスプデンチャー」の適応になります。ただし、このすべて樹脂製のノンメタルクラスプデンチャーは、強度が他の入れ歯に比べて大幅に劣ります。また、厚みもありますので異物感が強く、発音も不明瞭になりがちです。チタンにアレルギーがなければ、チタン床の義歯を作ることもできますが、自費の入れ歯の中でも高額です。つまり、残念ながら入れ歯の場合の歯科金属アレルギーの治療は、インレーやクラウン・ブリッジの場合と比較して、制約を伴うことが多くなってしまいます。

治療時の注意事項

1・歯科金属除去時の症状の増悪

歯科金属を除去する際は、細かな金属の粉がお口の中に飛び散りますので、原因金属に多量に曝露されることになります。したがって、除去処置を行った直後は一時的に症状が悪化する場合があります。ですので、処置時はなるべく金属が飛び散らないように、しっかりバキュームで吸い出したり、ラバーダム防湿(ゴムのシート状のマスク)を行うことがあります。

2・意外な歯科材料に対するアレルギー

金属を除去し、アレルギー症状が改善した後にセラミック等による治療に移りますが、ここで注意が必要なのは、まれに接着剤にアレルギーがある方もいることです。
現在の歯科治療ではセラミックやCAD/CAM冠の装着に接着性レジンセメントという接着剤を使いますが、この「レジンセメント」にアレルギーがあると、症状が消えなかったりします。また、まれですが、ハイブリッドセミックスやチタンにアレルギーを持つ方もいます。
実は歯科金属アレルギーの患者さんは、金属以外にも様々なものに対してアレルギーを有していることが多いため、治療を行う際は、原因金属を除去すれば良いという単純な話ではなく、こうした稀なアレルギーに注意を払うことも必要です。

3・仮歯治療の限界

前回のコラムで、原因金属を除去した後は、仮歯等でアレルギー症状が改善するかどうかを観察する、と説明しました。
しかし、この仮歯(テンポラリークラウン)は、強度が低いという欠点があるため、噛みしめや食いしばり癖がある、硬い食品が好きで良く食べる、かみ合わせが悪く特定の歯に強い力がかかる、といった患者さんの場合は、簡単に壊れてしまうことがあります。その場合、何度修理を行っても壊れてしまい、その繰り返しで日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。
その場合は、やむを得ず、金属アレルギーの確定診断を待つ前に強度のあるセラミック治療に進む場合があります。

4・歯科金属アレルギーと間違いやすい疾患

掌蹠膿疱症は歯科金属アレルギーにより発症する病気の一つです。日本皮膚科学会のホームページにも詳しく紹介されています(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa27/index.html)。

しかし、掌蹠膿疱症の歯科的な原因として、歯科金属以外に「歯の神経の病気(根尖性歯周炎)」が関与している場合があります。したがって、歯科金属を原因として疑うと同時に、お口の中に根尖性歯周炎を起こしている歯がないか精査する必要があります。この根尖性歯周炎が改善することで、歯科金属を除去せずとも、アレルギー症状が改善することもあります。

まとめ

さて、以上2回にわたって連載した「歯科金属アレルギー」の治療でしたが、いかがだったでしょうか。以前は高額なセラミック治療になりがちだったこの歯科治療も、材料の進歩で保険診療で治すことも可能になってきました。しかし、「歯科金属アレルギー」の治療で何よりも大切なのは、やみくもに歯科金属を除去することではなく、しっかりと皮膚科の先生と連携しながら根拠を持って治療していくことが大切です。
歯科金属アレルギーでお悩みの方、あるいはその疑いがある方は、お気軽に当院までご相談ください。

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