大人の口呼吸の弊害①

現在、新型コロナウイルスの感染を避けるため、マスクをして社会生活を営むようになりました。マスクはこのように外来からのウイルスや細菌が体内に侵入しないようにする、とても大切なツールとなっています。しかし、もともと人間の体にはそれらの感染から身を守るための防御機構があります。それが鼻の存在なのです。口を閉じ、鼻で呼吸する「鼻呼吸が天然のマスクの役割をしている」からです。

哺乳類の多くは、口を閉じて鼻から息を吸って鼻から息を吐くという鼻呼吸をします。したがって、本来人間も鼻呼吸が基本ですが、しゃべる、歌うなどの言葉を発する時や、スポーツなどの酸素を多く必要とする激しい運動をする時は口でも呼吸します。このように、人間は口でも鼻でもどちらでも呼吸ができます。ですから呼吸はどっちでもいいじゃないの?と思うかもしれません。
しかしながら、口呼吸は全身の健康において様々な問題を引き起こします。

今回のコラムは、大人の口呼吸の弊害について、以下の内容で2回に分けてお話しします。

・鼻呼吸のメリット・口呼吸のデメリット
・口呼吸している人の特徴
・口呼吸の原因
・口呼吸にどう対処する?
・あいうべ体操のすすめ
・睡眠時の口呼吸を防ぐために
・まとめ

鼻呼吸のメリット・口呼吸のデメリット

まずは鼻呼吸と口呼吸はどのように違うのかお話しします。

鼻はにおいを嗅ぐだけでなく、息を吸う際の「加温・加湿機能付きの空気清浄機」の役割があります。

  1. 加温:吸気の温度を調節し、鼻から入った空気を温めます。
  2. 加湿:吸気の湿度を調節し、鼻から入った空気に適度な湿気を与えます。
  3. 浄化:体内への異物の侵入を防ぎます。空気中の異物や病原菌は、鼻毛や鼻粘膜の線毛や粘液、それにのどの奥の扁桃リンパ組織でとらえられます。

このように鼻呼吸により、鼻から吸い込んだ空気は適度な温度と湿度が加わり、外来からの異物もカットされ、きれいな状態で気道を通じて肺に送り込まれます。このことが「鼻が天然のマスクである」という理由です。鼻で呼吸することが、身体の健康のためにいかに大事なことかお分かりいただけましたでしょうか。

一方、口呼吸はどうでしょうか?

口呼吸とは、口から息を吸って、口から息を吐く呼吸の仕方を言います。このため常時口を開けていないと呼吸ができません。いわゆるお口がポカンと空いている状態です。
では、なぜ口呼吸は良くないのか、以下に口呼吸のデメリットを挙げてみます。

  1. 吸気が加温・加湿・浄化されずに直接、口からのどを通って肺に入るので、のどや肺を痛めることになります。
  2. ①により、のどの防御機構が働くなるため、感染しやすくなり、風邪をひいたり、咽頭炎や扁桃炎になったりします。
  3. 口を開けていることで、唾液が蒸発し口の中が乾燥します。口の中が乾燥すると、唾液の殺菌・洗浄・消毒作用が機能しなくなるので、細菌の繁殖によるむし歯や歯周病、口臭などが起こりやすくなります。
  4. 口の中が乾燥すると、話しにくい、食べにくい、口の中がヒリヒリするなどの不快感を感じ、ストレスになります。
  5. 口の中が乾燥することで自律神経のバランスが崩れ、免疫力が低下します。すると全身に様々な病気を誘発します。例えば、腎臓疾患、慢性関節リウマチ、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎などです。
  6. 舌の位置も下がり、飲み込みがうまくできず、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
  7. 睡眠時に口呼吸をしていると、舌が下がることで、睡眠時無呼吸症やいびきをするようになります。そのため、睡眠不足や高血圧を招いたり、酸素不足による不整脈や心筋梗塞、脳梗塞なども引き起こす恐れがあります。

口呼吸をしている人の特徴

口呼吸をしている際の特徴は以下になります。

1.普段から口を開けている
2.口を閉じると、下あごに梅干しのようなふくらみとシワができる
3.下唇が厚くて(たらこ唇)、かさかさ乾燥している
4.下顎が小さく、後ろ下がっていて後退していて、歯並びが悪い
5.口を閉じた時に、舌の先が下の前歯の裏についている
6.口の両端が下がっている
7.朝起きるとのどがヒリヒリする
8.いびきや歯ぎしりがある
9.食べる時にクチャクチャ音をたてる
10.口臭が強い

口呼吸の原因

ではなぜ口呼吸をするのでしょうか?
それには、どうしても口を開けて呼吸するしかない原因があります。

1.噛み合わせなどの骨格的な問題:口を閉じずらい歯並びをしている、出っ歯ぎみである
2.口の周りの筋肉の問題:舌や口輪筋などの口の周りの筋肉の力が弱い
3.耳鼻科的な問題:鼻づまりや鼻水が出るなどの耳鼻科的な症状があり鼻で呼吸できない
4.気道の問題:アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大などにより気道が狭く、口を開けないと呼吸できない
5.普段から口が開いていて、口を閉じようと意識していない
6.話好き、歌うことが好きで、口を開ける機会が多い
7.ため息や喫煙の習慣がある
8.日頃、激しいスポーツをしている

以上、ここまで呼吸について鼻呼吸と口呼吸の違いについて解説してきました。特に大人の場合、年齢と共に口の周りの筋力が衰えることで、睡眠時に口呼吸になってしまうケースが多く見られます。次回はそのような場合の対応策についてお話したいと思います。次回のコラムも楽しみにお待ち下さい。

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