持病をお持ちの方の歯科治療① -全身状態のモニタリング

仙台市泉区の歯医者 明石台歯科医院 持病をお持ちの方の歯科治療

先日、当院では待合室に自動血圧計を導入致しました。「どうして歯医者に血圧計が必要なの?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれからの歯科治療では当たり前になってくるかもしれません。今回のコラムは、持病をお持ちの方の歯科治療と題して、歯科治療において全身状態を把握する必要性についてご紹介したいと思います。

歯科治療の特徴

実は歯科治療は、一般的な医療行為の中でも体への負担が非常に大きな治療を行なっているということをご存じでしょうか。例えば麻酔をして虫歯治療を行う場合、まずご自宅から歯科医院へ向かう段階で緊張される方が多いと思います。診療室へ案内されてユニットに座ると、さらに緊張が増します。一番緊張するのが麻酔をされる時だと思います。続いて歯科治療が行われるわけですが、我々歯科医師はできるだけ患者さんの負担にならないように注意して治療を行なっています。でも歯を削られる行為はとても不快なものです。さらに、機械の振動、キィーンといった甲高い音、水、風といった様々な刺激にさらされ、時には痛みに堪えたり、息を止めたりと、我慢(ストレス)を強いられます。こうしたストレスは、歯科治療が主に内科的な治療より、外科的な治療が多いことに由来します。

健康な人であれば、こうした歯科治療時にストレスがかかっても、それほど大きな問題になることは少ないです。しかし、高血圧や糖尿病、狭心症など特定の持病をお持ちの場合は、こうしたストレスが原因で持病の臓器に負荷がかかり、脳出血や低血糖発作、心筋梗塞、意識障害などを引き起こすことがあるため、十分な注意が必要です。

バイタルサイン

治療自体にストレスがかからないように医療者側が十分に配慮することは重要です。しかし、全ての治療からストレスを除くのは困難です。そこで、治療に際し「バイタルサイン」を測定し、治療中全身状態の悪化が見られた場合は速やかに治療を中断、あるいは中止するのが望ましいのです。バイタルサインとは全身状態の指標のことで、主に血圧・脈拍・呼吸・体温の4つを示し、これに意識レベルを加えることもあります。歯科治療時は、このうちの血圧・脈拍と呼吸の指標として動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定し、全身状態を把握します。

一般に、運動中や緊張しているときは血圧上昇・脈拍増加がみられ、安静にしているときはその逆で血圧低下・脈拍減少がみられます。SpO2は呼吸器疾患を有する場合に慢性的に低下しますが、治療中に呼吸を止めたりすると一時的に低下します。

SpO2は今回の新型コロナ感染症でも注目されたので、それで覚えた方も多いのではないでしょうか。また、最近のスマートウォッチには脈拍とSpO2を測定する機能を備えたものもあり、昔と比較するとより身近になってきていると思います。

歯科治療時のモニタリング

持病がある場合でも、全ての治療で一律にバイタルサインを測定するわけではありません。体への負担が大きい治療の場合に限って測定を行います。例えば、抜歯や歯を削る治療の場合は測定することが望ましいのですが、簡単な入れ歯・マウスピースの調整や詰め物の装着、消毒処置などでは行いません。

また、治療前の測定は全員が対象となりますが、その時の測定結果が良くなかったり、元々全身状態が悪く治療中も常時監視が必要な場合は、診療室で常時バイタルサインのモニタリング(監視)を行いながら治療を行います。ただし、当院ではバイタルサインの測定が必要ない治療の場合や、常時監視を行わない場合であっても、体調急変時にはすぐに測定可能な体制を整えております。

モニタリングが必要な持病

厚生労働省では、歯科治療時にモニタリングを行うべき持病を以下に定めています。

  • 高血圧性疾患
  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
  • 不整脈(心房細動など)
  • 脳血管障害(脳梗塞、脳卒中など)
  • 糖尿病
  • 喘息(ぜんそく)
  • 慢性気管支炎
  • 甲状腺機能障害
  • 甲状腺機能亢進症
  • 副腎皮質機能不全
  • てんかん
  • 慢性腎臓病
  • 人工呼吸器を装着されている方
  • 在宅酸素療法を行なっている方
  • 心臓ペースメーカーを装着されている方

これ以外にも、歯科医師が必要と判断した場合はモニタリングを行う場合があります。

医科歯科連携

患者さんご自身がご自分の持病を把握し、定期的にかかりつけ医院で診察を受けている場合は大きな問題になることは少ないです。しかし、ご自身で把握されていない病気がある場合は問題になることがあります。そこで当院では、初診および再来の方は通常の問診に加えてバイタルサインの確認を行い、何かしらの異常が見つかった場合は、かかりつけ医院にご紹介させていただく体制をとっております。

逆に持病が分かっているいる場合でも、体への負担が大きい歯科治療を行う前に、持病の管理状態についてかかりつけ医師に確認を取る必要がある場合は、当院から持病の状態についてかかりつけ医師に照会を行います。

今後、当院では医科歯科連携を充実させていく方針です。初診の際はご自身の持病について問診票に詳しくご記入していただくとともに、お薬手帳をご持参ください。

まとめ

さて、冒頭の話に戻りますが、今回のコラムを読んで、歯科治療前に血圧測定をする理由についてご理解いただけましたでしょうか。今後日本は平均寿命が伸び、ますます高齢化が進むことで、何かしらの病気を有する方の割合も増えていくと思われます。歯科治療を受けるにあたって、ご自身の全身状態を把握する重要性も増えていくと思われますので、当院におけるバイタルサインの測定やかかりつけ医院との情報共有にご協力いただきますよう宜しくお願いいたします。

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