入れ歯作りは時間がかかる?

みなさんこんにちは。今回のコラムは入れ歯作りの流れについてお話したいと思います。
入れ歯作りというと、患者さんによく言われるのが、型(かた)をとる治療のときに、「先生、今日型をとったから次回、入れ歯完成なんだよね?」ということです。これはアタリでもあり、ハズレでもあります。それは、どうしてなのでしょうか。

一般的な入れ歯作りの流れ

まずは、一般的な入れ歯作りの流れについて説明します。
1.お口の型をとる
2.お口のかみ合わせの記録をとる
3.完成前のチェック&微調整
4.完成&装着
これが大まかな工程になります。最短で2~3回の来院で完成に至ります。
ここで重要になるのが、『入れ歯のフィット感に個人差が大きいのはどうしてか』のコラムでもお伝えした、「お口の状態は個人差が大きい」ということです。これを各工程に当てはめて説明します。

1.お口の型をとる

大抵は金属製のトレー(枠)で型をとる歯科医院が多いと思いますが、実はこの金属トレー、既製品(既製トレー:図1)ですので、中にはお口にフィットしない患者さんもいらっしゃいます。そこで、患者さんそれぞれのお口にあったトレーを作ることがあります。これを専門的には個人トレー(こじんとれー:図2と呼びますが、特に失った歯の本数が多い人ほどこの個人トレーを使用したほうが良い型がとれます。
しかし、この個人トレーを作るためにも型が必要になります。したがって、患者さんによっては、この工程分の治療が1回増えます。
大まかな型(=個人トレーを作るための既製トレーを使ってとる型)、精密な型(=入れ歯を作るための個人トレーを使ってとる型)と説明されることが多いです。

仙台市 泉区 明石台歯科医院 入れ歯
図1:既製トレー
仙台市 泉区 明石台歯科医院 入れ歯
図2:個人トレー

2.お口のかみ合わせの記録をとる

入れ歯作りには、上顎と下顎の型が必要ですが、上下の位置関係を確認するために、かみ合わせの記録が必要になります。しかし、このかみ合わせの記録こそが最も重要です。
入れ歯を必要とする患者さんのかみ合わせは大きく3つに分けられます。

①残っている歯だけでかみ合わせが決まる場合
②残っている歯だけではかみ合わせが安定しない場合(「上下の歯がすれ違っている状態」又は「上下顎のいずれかが全く歯がない状態」)
③上下とも歯がなく、かみ合わない状態

①の場合は、型とりと同じ日に行うことがほとんどです。それほど苦労はありません。
②と③の場合は、そのままではかみ合わせが安定しないので、咬合床(こうごうしょう:図3よばれる装置を使用します。咬合床は、お口の型をとって作った石膏模型を使って作るので、型とりと同日に行うことはできません。ですから、咬合床でかみ合わせをとる日が型とりとは別に必要になり、患者さんによっては、この工程分の治療が1回増えます。

仙台市 泉区 明石台歯科医院 入れ歯
図3:咬合床

また、特にかみ合わせが不安定な患者さん(どこで噛んでいいか全くわからない等)は、さらに精密なかみ合わせの記録をとる必要があります。チェックバイトゴシックアーチ(図4)と呼ばれる手法を用いますが、これは咬合床でかみ合わせの記録をとった後に、別に装置を作らなくてはいけません。ですので、患者さんによっては、このゴシックアーチ描記装置を使う工程分の治療が1回増えます。

また、治療回数は増えませんが、患者さんによっては、上顎と頭の位置関係を正確に記録するための、フェイスボウトランスファーとよばれる作業を行うことがあります。

仙台市 泉区 明石台歯科医院 入れ歯
図4:ゴシックアーチ

3.完成前のチェック&微調整

ここも個人差が大きい工程です。

①かみ合わせ
②見た目
③発音
④唇、頬、舌の感触
⑤大きさや厚さ
⑥バネのかかり具合

といった項目に注意して、完成前の入れ歯を実際のお口に装着して適合性をチェックします。
この時点では、入れ歯の大幅な形態修正が可能ですので、不備があれば修正を加えます。修正後に改めてチェックを行うので、患者さんによっては、この工程分の治療が増えます。
また、金属床義歯の場合は、金属部分(メタルフレームと呼びます)の適合チェックを単独で行う場合もあるため、金属床義歯を作る場合は、この工程分の治療が増えます。

4.完成&装着

上記の工程を経て、ようやく入れ歯は完成になります。
かみ合わせが安定し、残っている歯の本数が多い人は最短2回で完成です。逆にかみ合わせが不安定で、自分の歯がほとんど残っていない人は5~10回くらいかかります。

結論として、入れ歯作りにかかる治療回数には個人差があります。ですので、治療期間が気になる方は事前に歯科医師と十分に相談しましょう。また、最初の患者さんの質問「先生、今日型をとったから次回、入れ歯完成なんだよね?」という条件に当てはまる人は、かなり限られるということになります。

入れ歯を装着できるお口の環境を整える

さて、入れ歯を作る工程について説明しましたが、上記はあくまで入れ歯を作るだけの工程です。言い換えれば、入れ歯を作っても良い状態になっているお口に当てはまるパターンです。患者さんによっては、すぐに入れ歯を作れる状態のお口ではない方もいらっしゃいます。
それはどういうことかと言うと、

・重度の歯周病に罹患してグラグラしている歯がたくさんある場合
・虫歯がたくさんあってそちらの治療が優先される場合
・歯並びが悪くて事前に歯科矯正治療が必要になる場合
・抜歯が必要な歯や、顎に除去手術が必要な骨の隆起がある場合

というような場合です。このような場合は、先にそちらの治療を優先して、後から入れ歯を作ります。
ですから、歯を失ってしまい、入れ歯治療を希望して来院した場合でも、すぐには入れ歯を作らない場合もあるのです。そのことを加味すると、入れ歯が入るまでの治療全体としてはさらに治療回数が必要になるでしょう。

例外

ただし、例外もあります。それは、すぐにでも入れ歯を入れないと見た目が大きく損なわれる場合(主に前歯が多いです)や、食事が困難になる場合です。このような場合は、あえて入れ歯を先に作り、他の悪いところを治療しながら、治療の進行度に応じて入れ歯を調整・改造して使用します。

入れ歯を装着したら

冒頭の以前のコラムにも載せましたが、入れ歯を装着したら最初のうちは“リハビリと調整”が必要です。装着して終わり、というわけではありません。また、入れ歯の調子が安定してきた後も、定期的な検診が必要です。

せっかく時間をかけて作ったあなただけの入れ歯です。
当院では、できるだけ永くその入れ歯を使い続けるようサポートして参りますので、入れ歯でお悩みの際は、お気軽にご相談にいらしていただければ幸いです。

最新情報をチェックしよう!