歯を失うとどうなる??

いきなりこんなタイトルの記事だと不安に感じるかもしれません。誰だって自分の歯を失いたくはないでしょう。しかし、歯科医師として、不幸にも患者さんの歯を抜かなければいけない状況は日々遭遇します。そこで今回は「歯を失うとどうなるのか」ということについて解説していきたいと思います。

結論から言うと、多くの場合、歯を抜いたまま放置してはいけません。当たり前に思われるかもしれませんが、その理由を正しく知っている人はそう多くはないと思います。

歯を失うことによる障害

「一次性障害」

歯を抜くとまず噛めなくなります。これを咀嚼障害(そしゃくしょうがい)といいます。見た目も悪くなります。これを審美障害といいます。前歯が1本なくなってしまっただけで、相手に与える印象は大きく変わります。そして、発音障害です。歯がないと間から空気が抜けてしまうので正確な発音ができなくなり、会話に支障をきたすことがあります。これら咀嚼・審美・発音障害の3つを合わせて、専門的には「一次性障害」と呼びます。これらは全部、歯の喪失と同時に起こる障害です。

「二次性障害」

続いて、歯を失ってからしばらくしてから起こるのが「二次性障害」です。抜かれた歯の隣の歯が、歯を抜いたことでできたスペースに倒れ込んできたり、空いたスペースに回転したり、横に移動したりします。また、抜いた歯とかみ合っていた反対側の顎の歯が、かみ合う力の行き場を失って歯ぐきから押し出されてくることがあります。よく「歯が伸びる」と言われる現象です。専門的には「挺出(ていしゅつ)」と呼びます。歯を抜いたことで、もともと歯があった場所の顎の骨も痩せていきます。顎の骨が痩せてしまうと、その場所にあった歯ぐきも痩せていきます。また、たとえ失った歯が1本だけであっても、歯を失うと歯磨きがしにくくなります。歯が抜けたスペースに接する面を磨くのが思っているよりも難しいからです。ですから、意識的に磨かないと磨き残しが起こりやすくなります。ましてや、先程述べたように歯が動いてしまうと、小さな隙間や段差ができるようになり、歯ブラシを正確に当てるのが困難になります。

こうした歯の位置の乱れが、徐々にかみ合わせを狂わせ、磨き残しが増えることにより歯周病を引き起こすリスクを増大させていきます。しかし、不思議なことに多くの場合、1~2本の歯を失っただけでは、徐々にその感覚に慣れてしまいます。数歯の欠損により、咀嚼効率は明らかに悪くなっているのですが、人間の適応力というのは凄いもので、舌や頬の組織が代償的に働くことにより、それなりに生活できてしまいます。審美的な問題も、前歯の場合は見た目の変化には慣れないかもしれませんが、奥歯なら人前で笑っても見えないことがあるので、気にならなくなってしまいます。

「三次性障害」

さて、こうした状態がさらに長く続くとどうなるのでしょうか。先ほどまでに起こる問題は、歯並びやかみ合わせなど、主にお口の中だけに起こる問題でした。しかし、今度はもっとスケールが大きくなります。かみ合わせの変化が起こっても、それなりに咀嚼ができるのは、舌や頬の組織だけでなく、口やあご、顔、首、頭を動かす筋肉や、あごの関節(両側のこめかみの辺りにあります)が代償的に働くためです。これはすなわち、顎口腔・顎顔面の筋肉や顎関節に無理をさせている状態です。当然これらの部位に無理が続けば、障害が発生します。具体的な例として挙げられるのが顎関節症です。お口を開け閉めするときや食事の際に顎がガクガクしたり、痛んだり、最悪の場合、お口が開かなくなったり、逆に閉じられなくなったりする病態です。また、姿勢に影響することもあります。ここまで病態が進行してしまうと、単純に失った歯を補う治療をしても、容易に症状が改善しない場合があります。これら咬合障害により、筋肉や顎関節に生じる障害を「三次性障害」と呼びます。

ですので、歯を失った状態を放置すればするほど、その障害の程度が大きくなります。そこでそうなる前、すなわち、一次性障害のうちに治療をしてあげる必要があるわけです。つまり、失った歯はできるだけ早期に補う治療を行ってあげる必要があります。では、具体的にどのような治療が適応になるのでしょうか。

歯を失った場合の治療法

まず挙げられるのが「入れ歯」です。入れ歯は人工の歯と歯ぐき、そしてそれを支えるバネの3つから構成されます。入れ歯はあまり良いイメージを持たれない方が多いかもしれませんが、他の歯を削る量が最も少ないので、実は体への負担が最も少ない治療法です。そして形態修正や改造が容易なので、将来的なお口の変化にも柔軟に対応できるというメリットがあります。一方、金属のバネが見えるので見た目が悪い、違和感が大きい、天然の歯に比べて噛みにくいといったデメリットがあります。

次に考えられるのが「ブリッジ」です。ブリッジは欠損(歯を失った部分)に接する両隣の歯を削って、被せものの橋渡しをします。前歯であれば保険でも一部を白くすることができるので見た目が比較的よく、入れ歯に比べて異物感が少なくかみやすいというメリットがあります。しかし、歯を削る量は大きくなりがちなので、体への負担が大きい治療法になります。また、欠損の大きさによっては、適応できない場合があります。

そして最後に考えられる治療法がインプラントです。インプラントは他の歯を削る必要がない、かみやすい、見た目が良い、違和感が少ないといったメリットがあります。しかし一方で、多くの場合、保険適応外なので治療費が高額になる、治療期間が長い、大きな外科処置が必要になるといったデメリットがあります。

これらの治療法はどれも一長一短で、患者さんのお口や体の状態に合わせて決める必要があります。ですので、自分にどんな治療法が適応になるのかわからない場合は、お気軽にご相談ください。明石台歯科医院があなたのお口の健康をサポートします。

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